対札幌戦(12−03A)。

基礎教程だけでなく,応用段階までを平行させる。


 確かに,そんな側面はあるな,と思います。


 浦和では,確かにチーム・ビルディングの初期段階なのですが,ミシャさんがどのようなフットボールをピッチに表現しようとするのか,すでにスカウティングができているわけです。であれば,初期段階の約束事「だけ」を表現しようとしてしまうと,相手のスカウティングに引っ掛かることになります。当然,基礎となる約束事を疎かにするわけにはいきませんが,基礎だけでは相手のスカウティングを打ち破ることができない,というのも確かなことです。


 何のために,約束事を徹底しているのか。


 背後にある意味を意識すれば,応用段階でどのような形を描き出せばいいのか,ある程度は見えてくるようにも思います。そして,今節はどのように応用を描き出すべきか,そのヒントが見えた,浦和でないと描けないミシャさんのフットボール,その取っ掛かりがちょっとだけ見えてきた,という部分があるようにも感じます。


 いつも通り,と言うにはちょっと遅め,なのに短めの札幌戦であります。


 さて。ごく大ざっぱに試合を振り返ってみるに。


 ゲーム・マネージメントという部分で課題を残した試合,というのがフェアだろうか,と思います。立ち上がりの時間帯,どちらが狙うフットボールを表現できていたか,と考えれば,恐らく相手が先手を取った,と見るべきでしょう。後手を踏む形で立ち上がり,先制点を奪われる。このビハインドを背負ったままハーフタイムを迎えることになるとすれば,ゲーム・マネージメントという課題はもっと大きな意味を持ってしまったか,と思うのですが,ここで心理面でイーブン,あるいは自分たちに主導権を引き戻すことができたのは,攻撃面での微調整だったように思うのです。


 パス・レンジであります。


 ショートレンジのパスだけに意識を振り向けるのではなくて,ロングレンジも繰り出していく,という形を意識していたように感じます。もちろん,相手の厳しいプレッシャーを単純に回避するだけ,であれば,意図のあるパスにはなりませんが,今節は相手が狙ったゲーム・プランを意識して,パス・レンジを長くしていたように感じるわけです。高い位置からプレッシングを仕掛ける,ということは当然,高い位置を基準とするコンパクトネスを意識しているわけです。であれば,相手守備ブロックの裏に生じることになるスペース,このスペースを狙うことで,攻撃を動かすとともに相手のゲーム・プランに対してクサビを打ち込む。パス・レンジはどちらかと言えばディテールな話ですが,このディテールが前半終了を視野に,という時間帯でのゴールへと結び付いたように見ています。


 そして,セットピースであります。以前も書きましたが,セットピースからどのようにして得点を奪取するか,というのはここ数季持ち越してしまった課題です。この,キャリーオーバーされ続けてきた課題を,今季はクリアして「勝ち点」を奪ってきている。昨季以前も,エクストラ・キッカーがいなかったわけではありませんが,今季のように「手の内を隠して」,という形にはなかなか持ち込めませんでした。今季は物理的にキッカーも増えているし,選択肢も増えています。この手応え,さらに強めていってほしいところです。


 ゲーム・マネージメント,という視点で見るならば,リードを奪ってからの動かし方もまだまだ,と言うべきかも知れません。知れませんが,描くべきフットボールが構築途上であるとしても,狙うフットボール,その表現が不格好であるとしても「勝ち点3」という足掛かりをつかんでいくことで,自分たちの狙うフットボールを熟成していかなくてはいけないし,表現できるフットボール,その柔軟性を高めていかないといけない。「勝ち点3」という足掛かりをさらに積み上げていく,浦和でないと描けないミシャさんのフットボールを描き出すためにも,実戦で見えてきた課題を生かしてほしい,と思います。