対柏戦(12−02)。

狙うフットボールに対して,確信を深めていく。


 そのためにも,「足掛かり」というのは重要な要素であるはずです。


 開幕節,相似形を描くフットボールと対峙することで,距離を体感できたのも確かでしょうが,反面で自分たちのフットボールに対する自信,その自信を少なからず揺さぶられたのも確かであるようです。チーム・ビルディング,それも初期段階であるとしても,できるだけ早い段階で結果,という足掛かりをつかみ,自分たちのフットボールへの確信を取り戻さないといけない。そして,さらなるチーム・ビルディングのステップへと上がっていく,そんな循環に乗っていかないといけない。そのためにも,このゲームは大きな意味を持っていたように思うのです。


 ひとつの試合で積み上げることのできる勝ち点は,決して変わるものではありません。リーグ戦のすべての試合は,等しく同じ重みを持つ,ということでもありますが,ひとつひとつの試合の位置付けまでもが同じ,というわけにはいきません。この第2節,単純な1/34以上の意味があった,と思いますし,この試合で「勝ち点3」を得たことは少なからぬ意味を持つ,と思うのです。


 いつも通り,よりもさらに遅れておりますが,の柏戦であります。


 さて。今回はスターターの話からはじめてみよう,と思います。


 前節は,恐らく攻撃面でのポジション循環を強く意識してセントラル・ミッドフィールド,そしてアタッキング・ミッドフィールドのスターターを決めたのかな,と思うのですが,結果的には意図する方向にチームを動かしきれなかった部分があるように思います。このことを前提に,今節の対戦相手を考えてみると,相手は中盤に明確なストロング・ポイントを持っているし,守備面から考えるならば,中盤でのボール・コントロールで主導権を握れないと,厳しい状態に追い込まれる可能性が高い。そこで,中盤での守備応対を意識してセントラル・ミッドフィールドのスターターを変更した,ということのように感じます。


 基本的なパッケージが,今季は3でもありますし,ちょっとかつての3的な言い方で今節の変更点を書いていきますと,スイーパー(指揮官は,試合後の記者会見でリベロ,と表現していたようですが)の位置に入ったのが永田選手であります。前節,このポジションに入っていた阿部選手が,一段上がってセントラルの位置に替わっています。そして,前節にセントラルの位置に下がっていた柏木選手が,アタッキング・ミッドフィールドの位置へと上がっています。そして,最終ラインには坪井選手が入り,トップにはデスポトビッチ選手,というスターターへと変更をかけていたのです。


 この変更,結果としてこの試合での鍵になったな,と思います。


 まず,守備応対面から見ていくと,相手の攻撃を窮屈な状態にしている時間帯を,特に前半段階ではしっかりとつくれていたのではないか,と思います。


 といっても,4−4ブロックを構築することで物理的なスペースを潰し,相手の攻撃を抑え込む,というアプローチではありません。どちらかと言えば,ストリクト・マンマーク的に攻撃面での鍵を握るフットボーラーへの対処を徹底することで,攻撃をギアチェンジしていく,そのきっかけを潰しに行く,という意識が徹底されていたように感じます。加えて書けば,アウトサイドでの主導権を掌握できていた,という要素も大きいように感じます。アウトサイドが主導権を掌握する,要はポジショニングで先手を取っているために,相手は自分たちの攻撃を仕掛けるためのポジショニングを取りづらい,そんな時間帯が積み重なることになります。結果として,相手はビルドアップ段階でちょっとした窮屈さを感じていたように受け取れたわけです。


 対して,攻撃面であります。


 いい意味で,スローな時間帯をつくることを意識しているな,と感じます。


 相手がしっかりとした守備ブロックを構築しているタイミングにチャレンジ・パスを敢えて繰り出す,という局面が比較的抑え込めていたのではないか,と見ているのです。相手がそれほど強くフォア・チェックを仕掛けてきていなかった,という部分を差し引く必要性もあるか,とは思いますが,最終ラインが,早い段階で厳しいスペースへと縦パスを繰り出す,という形が抑え込まれるようになっていて,むしろボール・ホルダーとなっているディフェンダーがボールを保持したまま,ポジションを上げながら相手守備ブロックの隙間を狙い,攻撃ユニットへのパス・タイミングを狙う,という形が(まだ相手にパスを引っ掛ける局面も多いし,時間帯限定ではあるとしても)戦術的な意図としてピッチに表現できていた,というのは悪くないな,と思うのです。


 戦術的な要素で見るならば,デスポトビッチ選手の1トップも今節における収穫,そのひとつであったように感じます。ポジショニング・バランス,という側面から見れば,ちょっとばかりファースト・ディフェンスの強度が強すぎる,そんな時間帯も感じられましたが,反面で高い機動力を表現している時間帯が多かったように思います。先制点を奪取した局面にしても,バランス面だけから見れば,ちょっと突出していたようにも感じますが,その高めのポジショニングによって,相手がプレッシャーを受けたのも確かなことでしょうし,ボールをいい形で相手からスティール,ボックスをトラバースするようにしてタイミングを狙い,ボールをゴールネットへと置きに行くようなフィニッシュを決めたのですから,12スペックなフットボールとの親和性は決して低くないのではないか,と感じさせるものがありました。


 さらに,今節は攻撃の循環を表現できた時間帯が,ある程度はつくれたかな,と思います。


 前半の段階で,相手守備ブロックをほぼ狙い通りに崩して,フィニッシュだけが決まらなかった,という局面がありました。恐らく,今季のフットボールはあのような局面をどれだけ多く試合の中でつくれるか,ということになるかな,と思いますが,このような局面をいかに「コントロール」してつくっていくか,がこれからの課題になるのかな,と思っています。機動力だけを前面に押し出して,この局面のような形をつくろうとすれば,コンディションの厳しい時期を乗り越えるのは,恐らく難しいでしょう。ポジション循環にしても,コンディション面での問題によって抑え込まれる可能性が出てきます。それだけに,どれだけスローな時間帯からギアを大きく変えられるか,狙って相手ゴールに飛び込んでいく枚数を分厚くできるか,がこれからの課題となるのかな,と思います。


 まだまだ,戦術的にも荒削りだな,と思うし,自分たちのフットボールに引っ張り込んだまま相手を離さない,という状態には持ち込めていないのも確かです。けれど,時間帯が限定されるとしても自分たちのフットボールを表現して,「勝ち点3」という足掛かりを得たことは決して小さくない。自分たちの時間帯をちょっとずつ,でも着実に長くしていく,そして,相手を自分たちのフットボールへと引きずり込んで,離さない時間帯をちょっとでも長くしていく。そんな状態へと近付いていく第一歩として,開幕節で揺らぎかけた確信を取り戻すきっかけとして,この試合での勝ち点3は意味が大きい,と思うのです。