対広島戦(12−01A)。

5季連続で,開幕節での「勝ち点0」。


 不名誉な記録であることは当然として,それだけ浦和は,「戻るべき場所」を変えてきた,チーム・ビルディングの初期段階を複数回経験してきた,という見方もできるように思うのです。であるならば,「同じ轍を踏まない」ことこそが強く求められるのではないか,と個人的には思っています。


 5季連続,にまで伸びてしまった不名誉な記録を,5季連続で食い止めること。そのためにできることは,すでに開幕節を終えた段階から始まっているように思うのです。相変わらず今季もいつも通り,ですが,いつもよりちょっと短めにアウェイ・マッチな広島戦であります。


 やはり,初期段階なのだな,と。


 ごく大ざっぱに書いてしまえば,クローズド・スキル,特に攻撃を仕掛ける局面でのクローズド・スキルという要素で対戦相手とは厳然たる差が存在していた,ということになるかな,と思います。指揮官が狙うフットボールを表現するために必要とされるクローズド・スキル,特に相手のプレッシャーにさらされている状態でのスキルであります。たとえば,相手を背負った状態でボールをコントロールする,というスキルだけでなく,チームとしていかにマークを剥がした状態を作り出し,リズムを微妙に変化させてボールを動かすスキル,という部分で,厳然たる差が存在しているように感じたわけです。


 チーム・ビルディングの初期段階から,かなり厳しく実戦負荷を掛け与えて,攻撃ユニットが必要とするクローズド・スキルを落とし込もうとしていたようには感じます。可能な限り強い実戦負荷を掛けて,そんな負荷が掛かった状態でも狙うフットボールが描けるか(要求されるクローズド・スキルをピッチに表現できるのか),しっかりと観察していたように思います。そして,トレーニング・マッチでは一定の結果を残してもいます。けれど,対戦相手は同じコンセプトで6シーズンを過ごしているチームでもあります。そんな相手から受ける負荷は,トレーニング・マッチの対戦相手から受ける負荷とはちょっと違う。「出方」(つまりは,強みの最も効果的な消し去り方)を知っている,そんな負荷の掛かり方だと思うのです。基礎的なクローズド・スキルだけでは対応しきれない場合,どのような対処をすべきか,その処方箋を皮膚感覚で理解しているはずだし,このことを逆方向から見るならば,どのような対応をすれば相手の攻撃力をそぎ落とせるか,理解しているはずなのです。


 熟成初期段階のチームが,熟成の進んでいるチームと,戦術的な基盤に共通性を持つフットボールで真正面から勝負すればどのようなことになるか。正真正銘の“ミラー・ゲーム”ですし,であるならば熟成度の差はそのまま結果へと反映される,その可能性が高くなるはずですし,残念ながら実際にその差がファイナル・スコアとして表われた,ということになります。


 「勝ち点0」という事実は事実として,しっかりと受け止めないといけない。


 でも,今季の開幕節は,「測距」という意味合いも相当に強いように思うのです。


 6季にわたって指揮官の薫陶を受けてきたチーム,そんなチームとの対戦で,指揮官が「浦和で(浦和の戦力的な個性を生かして)」描こうとするフットボール,その位置関係がどのあたりなのか,を実際に測るという意味合いが。


 リーグ戦の立ち上がり方としては,いささか厳しい相手との対戦だな,と思っていましたし,であれば,(いささか欧州的なアウェイの発想になりますが)「勝ち点1」の確保が現実的な目標かな,と思うところもありました。そんな予測は,やはり熟成の進んだチームに対しては楽観的に過ぎるものだった。しかし,このタイミングでしっかりと詰めていかなくてはならない課題が示されたのは決して悪いことばかりではない,と思います。ブレることなく,実戦で表面化してきた課題をトレーニングで潰し,次の実戦に生かしていく。ここ数季,必ずしも機能しているとは言いがたかった循環を機能させることで,熟成を進めていくことこそが求められているのではないかな,と思うのです。