500にワゴン。

誰だったか,イタリア車を理解したければ大衆車だ,と。


 さもなくばフェラーリだ,とも付け加えられる話のようなのですが,確かにその通りかも知れない,と思わせる話です。それだけ,イタリアのコンパクトは魅力的なモデルが多かったな,と思います。たとえば,ジウジアーロさんがデザインを担当した初代パンダであったり。そして当然,このクルマと同じ車番を使った,ノーヴァ・チンクェチェントなども。


 このワゴンも,なかなかに魅力的ではないか,と思います。


 今回はフットボールを離れまして,ちょっと古めのクルマの話。ジュネーブ・ショーで発表されたフィアット500のワゴン(webCG)について書いてみよう,と思います。



 現在,市場投入されている500をイメージすると,ちょっと印象が違うな,と思います。


 同じ500でありながら,印象が大きく違うように感じる,その大きな鍵はルーフ・ラインにあるかな,と見ています。アウディはA3のスポーツバック(5ドア・ハッチバック)を投入するにあたって,ルーフ・ラインを(パッケージング,という制約条件がありますが)オリジナルに近付けているように感じます。デザイン的な共通性を意識して,スポーツバックを追加した,と感じられるのです。しかしながら,この500ワゴンのスタイリングを見ると,チェントロ・スティーレは「共通性」をキーワードにデザインをしていたわけではなさそうです。どちらかと言えば,パッケージングを最適化させる,という部分からデザインを進めていったように感じるのです。


 たとえば,フロント・セクションを真正面から眺めてみると,ライト・ハウジングやエア・インテークなどの位置関係には確かに,ダンテ・ジアコーサ時代のチンクェ,その現代的な再解釈である500との共通性を感じますが,サイド・セクションからの眺め,特にルーフ・ラインを眺めてみるとワゴン,というよりも理想的な5ドア・ハッチバックのスタイリングを実現しているように感じられるのです。


 搭載されるエンジンに関しては,900ccの直列2気筒に1400ccのインライン4,そして1300ccのディーゼルが用意されるとのことで,恐らく日本市場に導入されるときにはディーゼルという選択肢は落とされるのでしょうが,個人的にはディーゼル・モデルで長距離を乗ってみたいと思わせる,そんなパッケージングを持った,なかなか理想的なセグメントBではないかな,と感じています。


 フロント・セクションで存在感を主張する,そんなクルマが最近増えておりますが,このクルマはシンプルであって,キュートでもある。ひさびさに,新車で興味をひかれるコンパクトだな,と思っていますし,国内導入が楽しみです。