距離(第49回日本選手権・2回戦)。

アップセットを演じられれば,もちろんそれが理想ではあるけれど。


 簡単には描き出せないからこそ「理想」である,というのも事実です。相手が持っている強みを徹底的に抑え込めたとしても,それだけでは恐らく不足,でしょう。自分たちの強みも表現できなければいけないし,当然ながら勝負事ですから,「幸運」の存在も必要になってくる,かも知れません。それらの要素がそろってはじめて,「理想」が描き出せるのだとすれば,今日の熊谷の2試合はいくつかの要素,あるいはほぼすべての要素がそろわなかった,と言うべきなのかも知れません。


 カップ戦なのだから,考えられるすべてを投入して結果を引き出す。


 勝ち進むなかで,チームが何かをつかむ。そのためにも,「結果」が最重要項目なのだ,と。そんな意識で日本選手権に臨む,というのもひとつの解かな,と思います。そして,アウトサイドはそんな姿勢をどこかで期待しているように思います。そんな期待感は,対戦相手にとってはオフ・ザ・フィールドのプレッシャーだったかな,と思います。トップ・カテゴリを戦うチームにしてみれば,ゲームへの入り方を間違えてしまえば,アップセットへの悪循環へと嵌り込むことにもなりかねません。ある意味では慎重でなくてはいけないけれど,慎重過ぎればかえって相手にリズムを譲り渡すことにもなってしまう。グリーンロケッツにしても,ブレイブルーパスにしても,フィールドからは「普段通り」という雰囲気を感じたのですが,実際にはかなり意識して「普段通り」を描き出そうとしていたのではないかな,と思います。


 では,グリーンロケッツブレイブルーパスの対戦相手は,どんな意識で試合に入っていったのだろうか,と想像をめぐらせてみるに。


 恐らく,自分たちのラグビーを「カップ戦仕様」に微調整してはいなかったかな,と感じます。むしろ「自分たちのラグビー」で真っ向勝負を挑み,どこまでできるのか,を意識して試合に入ってきたのではないかな,と思うのです。ファイナル・スコアから判断するならば,できたこと,表現できたことは残念ながら限られてしまった,ということになるかな,と思います。思いますが,同時に「距離」が明確に感じ取れたのではないかな,と思います。自分たちの強みをより強く表現するためには,何が必要なのか,であったり,相手の強みを抑え込みながら,同時に自分たちの強みを表現するためには,どんな約束事が必要なのか,であったり。守備応対面にしても,攻撃面にしても,厳しい壁だったからこそ感じられたこと,が多くあるのではないかな,と思います。イーグルスは来季に向けてのチーム・ビルディングに,帝京は交流戦であったり来季の対抗戦,そして大学選手権に向けてどうチームを進化させていくのか,という部分に多くのヒントが得られたのではないかな,と思います。


 この季節としては珍しく,電光掲示板方向とは逆方向からの冷たい風と,前日とはまったく違う,ちょっとばかりイングランドの空を思い起こさせるようなグレーの空の下,そんなことを感じた2回戦でありました。ひとつひとつのゲームについては,ちょっとアタマを整理してから書いていこう,と思います。