東芝ブレイブルーパス対ヤマハ発動機ジュビロ戦(第49回日本選手権・1回戦)。

22mラインより深いエリアの戦い方かな,と思います。


 やはり清宮さんだな,と思わせる緻密なゲーム・プランでした。ブレイブルーパスが持っている強み,その強みに真正面から対峙するのではなくて,その強みを出させないようにしながら主導権を握ろうとする。その意図は駒沢のフィールドにある程度,表現されていたように思います。でも,トライへと結び付く時間帯が多かったかな,となると,答えは違ったものになるかな,と思います。


 「個」という言葉に答えを求めることもできるかな,と思いますが,深いエリアでの守備応対,その厳しさという部分でブレイブルーパスは,確かにジュビロの攻撃を上回っていた,ということもできるように思うのであります。引き続き,駒沢での日本選手権のお話であります。


 にしても,駒沢は寒かった。


 玉川通り方向から風が吹き抜けていて,その風がなかなかに強いのですよね。であるならば,ホット・コーヒーでも飲もうかな,と思ってインターバルにコンコースに出てみれば,「缶コーヒー」だけが選択肢であります。確かに携帯カイロ代わりに使える時間帯もあって,これはこれで悪くないな,と思いつつ,でも絶対的にホットな飲み物の選択肢が少ないな,と(アルコールを期待するわけではないですけど,でもホット・ワインの出番なコンディションだったのは確かですね。)。もうちょっと,選択肢があるとありがたいな,と思いつつ,話を戻します。


 では,ジュビロの印象から。


 冒頭にも書きましたが,ブレイブルーパスの戦い方をしっかりとスカウティングしてきたな,という戦い方であるように感じました。感じましたが,同時に「足らざるもの」を明確に感じる試合でもあったかな,と思います。敵陣深くに攻め込んだあとの「形」であったり「アイディア」であります。


 ボールを自分たちのリズムで動かし,エリアを奪う,という意味でこの試合を見るならば,ジュビロも決して悪くなかったと思います。むしろ,ブレイブルーパスよりも「らしく」ボールを動かせていたようにも感じます。けれど,ゴールエリアにまであと数m,というエリアでブレイブルーパスの守備ブロックを崩せない,という局面も多かったようにも感じます。このエリアからゴールエリアへの約束事,相手が出発点ではなくて,自分たちが出発点の約束事を描けるかどうか。決して低くはないステップだと思うのですが,このステップをあがれるかどうか,がトップリーグでの勝負権,あるいは日本選手権での勝負権を本当の意味で握れるか否か,に関わってくるような印象を持っています。個人的には,楽しみにしているチームでもあります。


 続いて,ブレイブルーパスでありますが。


 アソシエーション・フットボールな表現を使いますが,“リトリート”をこの試合では表現したかな,と思います。自分たちから仕掛ける守備応対,積極的にエリアを奪い,エリアを高めながら仕掛ける守備応対ではなかったな,と思います。思いますが,クリティカルな局面での守備応対の厳しさはこの試合にあってもしっかりと表現されていたように思います。割られてはいけないエリア,守備ブロックにクラックをつくってはいけないエリアで,しっかりとコントロールされた守備応対を繰り返していたことで,結果としてリズムをつくっていたはずのジュビロからリズムを奪い去ることができていたように思うのです。局面ベースで見れば,ブレイブルーパスらしさをしっかりと表現できた試合だったかな,と思うところです。


 でありますが,です。


 2回戦のことを考えると,(ちょっとゼータクな要求になりますが)「試合の入り方」がちょっと気になるかな,と思います。この試合,ペース・セットを積極的に意識していたのは,ジュビロでした。清宮さんが,どんな手法でチーム・ビルディングをしているか,そして試合に向けて準備をしているか,過去のことを思い起こしてみても,立ち上がりから自分たちのゲーム・プランに引き込んでこようとするのは「想定範囲内」だったように思うわけです。でありながら,実際にジュビロのペースでゲームを動かされてしまって,そのリズムを取り返すのにちょっとばかり時間をかけてしまっていたような印象を持っています。好意的に解釈すれば,ブレイブルーパスが「普段通り」のラグビーを描こうとした,その証左かも知れませんが,カップ戦の戦い方としては,普段通りというのは「隙」につながりかねない要素だったかな,と感じるのです。2回戦の相手は,恐らくスカウティングを生かしながら「真っ向勝負」を仕掛けてくるでしょう。その真っ向勝負を真正面から受け止めてしまうようなことがあると,リズムを取り返すのに時間が掛かってしまって,その時間がクリティカルなものになりかねない,なんてこともあり得ます。心理面で後手を踏むことなく,試合を動かしていけるかどうか。


 アウトサイドとしては,どこかで「アップセット」を期待するところもありますが,反面で大学勢との「距離」をしっかりとフィールドに表現してほしい,という思いもあったりします。いずれにしても,緊張感であるとか,駆け引きであるとか,さまざまな要素が絡み合う立ち上がりになるのかな,と想像しています。