カペッロ辞任をめぐるエトセトラ。

直接的な原因は,確かに指摘通りなのだろうけれど。


 果たして,直接的な原因だけが作用していたのかな,と思ったりします。個人的には,最後の要因という見方もできるのではないかな,と感じたりもするのです。


 ひさびさに,欧州な話をスポーツナビさんの記事をもとに書いていこう,と思います。


 イングランド代表を預かってきた,ファビオ・カペッロさんが辞任,というのがこの記事の中心でありまして,そのきっかけとして指摘されるのが,イングランド代表主将を務めるジョン・テリーに対するFAの対応,であります。彼は,QPRとのゲームにおいて,アントン・ファーディナンドに対して人種差別的発言をした,とのことで英国検察庁から起訴されているわけですが,FAはこの事態に対してテリーから主将の座を剥奪,という対応をしたわけです。チームを預かっているカペッロさん,その頭越しになされたこの対応が,カペッロさん辞任の直接的な原因である,というわけです。


 なるほどね,と思うところは確かにあります。


 検察庁による起訴をもって,事実が確定するわけではありません。公判廷を通じて事実がどのようなものだったのか,明らかにしていくわけです。それまでは,嫌疑がかけられているとしても無罪の推定が働く,というのが原則であるわけですね。FAの対応は,その原則を理解している対応とは評価できませんし,チームについての決定は,チームを預かっている指揮官に委ねられるべきものでもある。その限りにおいてカペッロさんの反応はごく自然なものだな,と思います。


 思いますけども,というのが個人的な感触でもあるのです。


 FAへの不信感は,テリーへの対応に限ったことではなかったのではないかな,とか,去年あたりから漂っていたカペッロさんへの不信感,と言いますか,信頼感低下という空気を敏感に感じ取っていたところがあるのではないかな,と思うのです。要は,辞任のタイミングとして絶好のタイミングに,FAがテリーへ時期尚早な対応をしたことで,辞任を思いとどまる何かが外れた,ということもあるのかな,と見るわけです。
 カペッロさんが指向するフットボールを思い起こしてみると,何とも現実主義的なフットボールであります。結果が厳しく要求される代表チームにあっては,決して不思議なスタイルでもないのですが,ではイングランドが何らかのタイトルを奪取した,少なくともタイトル奪取の勝負権を持った,という感触がカペッロさんの在任中に感じ取れたか,となると,厳しいものがあるのも確かです。ミランであったり,マドリーでアウトサイドを納得させた「結果」というピースが,イングランドではなかなか埋まらなかった。となると,アンチ・スペクタクルと言いますか,リアルなフットボールに対する反発というのはより強くなってしまうようにも思うのです。実際,カペッロさんを取り巻く空気というのは,決してカペッロさんに対して好意的な色彩を持っていたわけではなさそうです。そんな空気が,どこかで作用したようには思うのですね。


 で,後任であります。


 スパーズのダッグアウトを仕事場としている(とは言いながら,個人的にはアップトン・パークダッグアウト,というイメージがまだ強く残っている),ハリー・レドナップさんが有力候補としてUKメディアでは報じられているようですが,フース・ヒディンクさんであったり,マグパイズを預かっているアラン・パーデューさんという話もあるのだとか。いずれにしても,欧州選手権へのリード・タイムは決して多くはないわけで,FAとしても可能な限り早く,後任を決定しないといけないのではないかな,と思っています。