ヨシムラとクレセント・スズキ。

主戦場に,チャレンジできる舞台を選ぶ。


 以前から,そんな姿勢が見えていたな,と思います。


 もともと,X−フォーミュラへ“ハヤブサ”を持ち込もう,という決定をしたときも“チャレンジ”という言葉が鍵になっていたようです。改造範囲が限定されているSBK,その技術規定ではなかなかできないチャレンジを,敢えてレーシングな世界とは距離を置いているハヤブサでしてみよう,という意識が働いていた,という話をある雑誌で読んだ記憶があります。エンジンだけでなく,車体を含めてゼロからレーシング・マシンを仕立てていく。そんな過程を通じて,レース屋としてのヨシムラ,その原点を表現していくという意識があったのだとか。そんなチャレンジする姿勢,昨季はWSBKへのスポット参戦,という形で表現されていたようです。


 マシンを仕立て,自分たちでレース・オペレーションを担当して。


 そういう形とはちょっと違うとしても,今季はスポットではなくてフル参戦ということになる。楽しみだな,と思います。リーグ戦(と,ヤマザキナビスコカップ)についての日程がリリースされて,いよいよシーズンが動き出すな,という感触が強まってきた時期でありますが,今回もフットボールから離れまして,スズキ・レーシングのリリース(英語)をもとに,ちょっと書いていこう,と思います。



さて。今季,ヨシムラをパートナーに選んだクレセントでありますが。もともとは,BSB(英国スーパーバイク選手権)を戦っていたレース屋であります。数季前には,加賀山選手(鈴鹿8耐では,ゼッケン12のGSX−Rをライディングしております。)が在籍していたプライベティアではあるのですが,実質的にはスズキのUKでのレース活動を支えるファクトリーとして位置付けられる,そんなレース屋である,と考えていいのではないか,と思います。そんな彼らが,今季からWSBへと主戦場を移し,技術的なパートナーとしてヨシムラを選んだ,というわけなのです。


 ヨシムラは,あくまでメーカとは独立した(距離を置いている)レース屋なのですが,実質的にはスズキのファクトリー活動を支えてきている、というのも確かです。たとえば,北米におけるスズキのレース活動を支えているのは,北米に本拠を構えるヨシムラだったりするのです。また,ヨシムラはエンジン・チューナーとしての色彩がかなり濃いレース屋であった,というのも指摘しておくべきかも知れません。まだ,ヨシムラが活動拠点をカリフォルニアに置いていた時代,ヨシムラの知名度を高めたのは“サイクロン”と呼ばれることになる4−1エグゾースト,だったと聞きます。また,創業者である吉雄さん,そのチューニングに対する姿勢は明確なものだった,と言います。エンジン・パワーが勝負を決める決定的な要素だ,と。そんなこだわりが,チューナーとしての伝統になっていて,クレセントとのパートナーシップにつながったのかな,と感じるところです。


 WSBKは,フィリップ・アイランド(2/26)で開幕戦を迎えます。リードタイムとしては,決して大きなものとは言えないかな,と思いますが,しっかりとした準備をしてほしい,と思いますし,いい立ち上がりを見せてほしい,と思っています。