プジョー、突然のWEC撤退。

スポーツ・プロトタイプにこだわってきたメイクス。


 WRCであったり,ラリーレイドのイメージも確かに強いのですが,スポーツ・プロトタイプにも強いこだわりを示してきた。そんな歴史のあるメイクスの姿を,今季はサルテなどのパドックで見ることはできません。今回はフットボールを離れまして,こちらのニュース記事をもとに,モータースポーツな話を書いておこう,と思います。


 アウディスポルトと並ぶ,WECにおける有力コンテンダー。


 今季のプジョー・スポールをこのように見ていたモータースポーツ・ファンは,決して少なくなかったのではないかな,と思います。


 スポーツ・プロトタイプへと復帰した初年度へと,ちょっと時計の針を戻してみます。すでにこの段階で,彼らはル・マン制覇を意識したマシン設計をしていました。技術規則を徹底的に読み込み,考え得る最適なマシン設計を追い求めていたように映るのです。ある意味,ファクトリーらしいファクトリー・チームです。ではありますが,「速さ」を持っているとしても,「強さ」という部分でちょっとした不安定さを時に見せていた,というのも確かです。2009シーズン,アウディからル・マンポディウム中央を奪ってなお,どこかに脆さと言いますか,バランスの悪さのようなものを感じさせてきたように感じるのです。


 そんなプジョー・スポールの印象は,昨季のル・マン24時間で大きく変わったように感じます。


 端的に書けば,「速さ」と「強さ」のバランスがかなりの水準で整ってきたように感じるのです。不思議に浮き足立った印象が強いアウディとは対照的に,冷静にレース・オペレーションをしていた,そんな印象が強いのです。それゆえ,今季の世界戦はアウディとの真っ向勝負が見られるかな,と期待していたわけです。それだけに,この突然のリリースは,あまりにもったいない,と思わざるを得ないものです。
 反面で,欧州の経済情勢が直接的にPSAへと波及したのかも知れない,という印象も同時に持っています。(どのような因果関係があるか,はアウトサイドからはなかなか読み取れませんが)欧州の経済情勢の影響を受けて,PSAの財政基盤が厳しい状態に追い込まれている。市販車のプロモーションに直接的に結び付かないスポーツ・プロトタイプ,WRCを含めて考えるならば,世界を転戦することが必要となるカテゴリを同時並行的に戦っていくだけの余力,マシン開発などの基盤となるフィナンシャルな側面での余力を持てる状態ではない,ということを示しているのかな,と感じるわけです。


 ただ,プジョーは将来的なWECへの復帰も示唆しているようです。強気なファクトリー・チームであるプジョー・スポール,彼らの復帰を個人的にも期待したいと思います。