阿部選手復帰に思うこと。

おかえりなさい。そして,ありがとう,ですね。


 オフィシャルにもリリースがアップされておりますが,阿部選手が浦和に復帰,とのことです。今回は,ちょっとだけ思うところを書いていこう,と思います。


 まずは,昔話からはじめることにします。


 駒場で阿部選手の姿を見ていたときは,イングランドでトップフライトを達成して,プレミアシップという舞台を主戦場としたあとに,いつか浦和に戻ってきてくれるといいな,と思っていたのですが,その時期はちょっと早かったのかな,とどこかで思ったりもします。


 しかしながら,指揮官が代わってからの起用方法はどこか,不思議な印象を残すものでもありました。イングランドへ移籍した直後であるならば,チームに溶け込むための時間が必要,などという説明ができると思うけれど,そんな時期ではないはずです。主軸として活躍していて不思議のない時期なのに,クレジットを見つけられない時期もあった。そんな時期に,具体的な話があったのかな,などとも思うのですが,そんな話が浮上すると急に,クレジットを見つけられるようにもなった。プレミアシップを主戦場とするクラブが興味を持っていた,などという話もあったような記憶がありますから,本格的にイングランドでチャレンジを,それもより高い舞台でチャレンジをしていこう,という意識が阿部選手のどこかにあって,何かのタイミングが合致したとすれば,今回の話は実現しなかったのかな,と思うところもあるし,イングランドびいきとしては,阿部勇樹というフットボーラーに,もっとイングランドでの存在感を強めてほしかった,という思いがどこかにあったりもします。


 しますけども,です。いまの浦和にとっては,やはり重要なピースです。


 ミハイロさんは,“インテリジェンス”を明確に要求する指揮官です。単純に「走る」能力だけを求めているわけではありません。相手にとって危険なスペースへと走っていける能力,そのスペースを突く能力が連動していくことを求めているように思います。高い機動性を持っているとしても,その機動性を存分に生かすためにはリズムを動かせないといけないはずだし,その機動性を相手に対する脅威とするためには,相手にとって危険なスペースを見定められないといけない。そして,昨季は“ポジション・フットボール”によって抑えられていた要素,縦方向の流動性も意識していく必要があるはずです。守備バランスを意識しながら,同時に攻撃ユニットがギアチェンジを仕掛ける,そのためのスイッチ,そして縦方向の流動性を積極的につくっていく役割が,このチームにあっても必要なはずですし,そのときにミハイロさんのフットボールに近いフットボールを深く理解しているフットボーラーは誰か,と。イビツァさんの薫陶を受けている阿部選手という選択は,なるほど論理的だな,と思うのです。


 戦力補強,という側面で見るならば,まだ不足しているように感じられる,そんな部分も確かにあります。ありますが,守備ブロック方面から見たチーム・バランスは確かに整ってきたかな,と感じるところです。ここ数季,指揮官が必要としているだろう戦力,狙うフットボールから見て必要だろうと感じられる戦力的個性と,クラブ・サイドが実際に補強してきた戦力的な個性とが必ずしも一致しているとは思えないところがありました。少なくとも今季は,ミハイロさんが狙うフットボールを落とし込んでいくにあたって,必要な戦力が補強されてきている,とは言えるように思います。あとは,シーズンが実際に動き出したあと,どれだけ機動的に補強を展開できるのか,が問われるのかな,と思います。