2012シーズン的キット。

意外に,ナイキさんはディテールにこだわる。


 2004シーズン以降のキットを振り返ってみるに,そんな印象があります。初年度からこだわってきた,とされるポロ襟を廃止したか,と思えば,チャイニーズ・カラーをイメージさせるような複雑なスタンドアップ・カラーを採用したり,三菱重工,自工の歴史から引用したディテールを持ち込んだり。なかなか興味深いディテールへのこだわりだな,と思う要素もある一方で,ちょっとディテールへのこだわりが上滑り気味かな,と思う要素もあったかな,と思います。


 今季については,ディテールへのこだわり,賛否両論と言いますか,否定的に見られる可能性があるかな,と感じます。例年エキップメントをオフ・シーズンには取り上げておりますから,今季もこちらのページ(浦和オフィシャル)をもとに,2012シーズン仕様のユニフォームについて書いておこう,と思います。


 さて。まずアウェイ・キットから見ていきますと。


 やはり,アクセントであるダイヤモンドのグラフィックに視線が奪われます。胸から脇部分にかけて施された,ダイヤモンドのアクセントであります。そのアクセントに使われている色は,黒で統一されたアウェイ・キットでは浦和の前身である三菱重工サッカー部,そして三菱自工サッカー部が使っていた青であります。青,というとどうしても,初年度から2シーズン使われていた,あのアウェイ・キットを思い出すわけですが,今季のアクセントに採用されている青は,かなり深みを持たせた青になっています。赤の存在感を最低限(ストッキングのアクセント・カラーに採用されております。)に抑えながら,同時に“ダイヤモンド”という要素を大胆に浮かび上がらせよう,という意図でしょう。


 続いて,サード・キットであります。


 黒で徹底したアウェイ・キットとは対照的に,白で徹底されております。そして,ダイヤモンドのアクセントには,赤が採用されています。昨季のアウェイ・キットはホーム・キットと同じようにポロ襟を採用していましたが,今季についてはアウェイ・キットを含めて,ポロ襟は取り外されています。その意味では,2006シーズンから2008シーズンにかけて採用されていたアウェイ・キット,機能性を前面に押し出すと同時に個性的なディテールを組み合わせていた,あの雰囲気とちょっと共通する要素があるな,と思わせる部分です。


 そして,ホーム・キットでありますが,です。


 賛否両論なディテール,とマクラに書いたのは,このホーム・キットのことです。年末年始,中野田や柏の葉,そして国立霞ヶ丘などに設置されていたADボード,あの雰囲気がそのまま胸部分に入ってしまったのではないか,と受け取られてしまいかねないディテールだな,と思ったのです。浦和の,と言いますか,ナイキのアナウンスメントを読むと,赤白黒,のトリコロールを視覚的に強調するためのディテールだ,とのことです。であれば,2008シーズンのホーム・キット,その背中部分に施されていたアクセント・ラインと同じような意味合いのディテールである,と理解できるようではあります。ただ,アクセント・ラインとしてこのトリコロールを位置付けるのであれば,フィニッシュの方法はほかにもあったかな,と思うのですね。たとえば,リーベル(個人的にはボカ・ジュニオール,と書きたいところですが,カラー・スキームからすれば,リーベルがより近いですからね。)のように斜めにアクセント・ラインを走らせる,という方法もあったかな,と思うのですね。ザバスさんがADボード,中野田でのLEDボードではなくて,固定式のボードで使っている色調と一致してしまっているから,トップ・パートナーである明治さんの意向に配慮したデザイン変更ではないか,と思われてしまう可能性がある,そんなディテールかな,と感じるわけです。


 とは言いながら。基本的にホーム・キットなどは「強さ」によってその印象が変わってくる,という部分があるのも確かだろう,と思います。どんなチーム・ビルディングを経て,どんな強さを身に付けていくのか。その過程によって,見え方がポジティブな方向へと違ってくる,そんなキットであればいいのかな,と思います。