ミハイロさんの記者会見。

やはり,イビツァさん的な要素を強く感じさせますね。


 また,「考えさせる」という部分で見れば,コーチとしてファースト・チームに関わってくれる堀さん,彼が下部組織で狙ってきたフットボールとの共通性も感じさせます。


 今回は,こちらの記事をもとに,ミハイロさんがどんなフットボールを意識しているか,そして,どんなファースト・チームを構築しようとしているのか,ちょっと見ていこう,と思います。


 さて。3か4か,はさておいて,今季どんなフットボールを狙っていくのか,見てみると。


 現代的なフットボールは,確かに足下を狙ったパスを多く繰り出す方向にあります。ありますが,その足下というのは,「止まった状態」での足下ではありません。たとえば,24秒ルールに拘束されることのないバスケットボールのような攻撃スタイルであるように感じます。24秒,という外的な拘束がないのだから,(24秒,という拘束がかりにあるとしても)カウントダウン・タイマーのスイッチは自分たちが押せるわけです。攻撃を仕掛けよう,加速させよう,というスイッチは自分たちで操作できる,というわけです。となれば,オフ・ザ・ボールでのポジショニングやフリーランが,攻撃のギアチェンジを仕掛ける,という部分で重要な意味を持ってきます。ということを意識しながら

 サッカーでまず大事なのは走ること、その次にやるべきことは考えながら走ることです。大切なことは走ることですが、いかに走るか。相手の危険なところに走っていけるかが大切です。どこに走るかは考えないとできないことです。あとは走ろうかなと考えていても走らないと意味がない。常に走ること、考えること。今季のサッカーをする上ではインテリジェンスが求められる。試合のなかでインテリジェンスを発揮できるかどうかがすごい大切な要素になります。


とのコメントを読んでみると,ミハイロさんがどんなフットボールを狙っているのか,ある程度読み取れるのではないかな,と感じます。


 3か4か,それ以前として,チームが連動して相手守備ブロック,その隙を突くために「走れる」こと,その走りに反応してボールを動かせることを明確に求めているな,と思うのです。走る,という要素を大きな柱として位置付けているのは,やはりイビツァさんとの共通性を強く感じさせる要素です。ただ,「走る」ことだけを求めているわけではありません。このコメントでミハイロさんは,「考えて」走ること,の重要性を明確に指摘してくれています。「個」を結び付けるために,インテリジェンスを要求する。そして,インテリジェンスの基盤として,約束事を落とし込んでいく。どんなコンビネーションを求めていくのか,そのコンビネーションを引き出すためにどんなパッケージを落とし込んでいくのか,はファースト・チームが本格的に動き出すと見えてくるのだろうな,と思いますが,組織としての機能性を強く求める,そんなフットボールになるのは間違いないな,と感じるところです。


 で,組織の話になりますが。


 昨季,ジェリコさんは「個」を出発点とするチーム・ビルディングを標榜しようとしましたが,残念ながら昨季の浦和では「個」と「組織」のバランスが整えられなかった,という印象があります。ひとりひとりのフットボーラーが,「個」を最大限に表現すること,その集積がチームとしてのパフォーマンスにつながる,という発想だったかな,と(あくまでも最大限好意的に解釈すれば,ではありますが)理解できるところですが,では,「組織」としての共通理解がどこまで深まっていたでしょうか。もともとジェリコさんが持ち込もうとした約束事が,戦力的な個性とのミスマッチを起こしていた,という部分は確かにありますが,約束事が明確に共有されていた,という印象は薄いまま,シーズン途中での指揮官交代という事態に陥った。


 それだけに,ミハイロさんが言う,「安定した土台」を構築することは今季の浦和にとって,最重要の課題である,と言うべきでしょうし,ミハイロさんにとっての最も大きなタスクだろう,と感じます。そして,土台を揺るがせないためには,しっかりとした戦力の「観察」も必要でしょう。戦力的な観察を通じて,ミハイロさんの持っている理想,その理想との距離感が測られるのでしょうし,その距離感によってはより現実的な約束事が選択されるのかも知れませんし,その中で現段階での浦和,その戦力的な個性を組織に組み込みやすいパッケージが選択されていくのかな,と見ています。


 過去,浦和は「安定した土台」を構築しよう,という意思を掲げながら,その意思を「継続」しきれなかった,という印象を持ちます。清尾さんの言葉を借りるならば,漢方薬の「苦味」に耐えることができなかった,という印象を。今回もまた同じ轍を踏むわけにはいかないし,チームとクラブ・サイドが同じ方向を見続けられる,そんな体制を構築できていないといけないのは言うまでもありません。ミハイロさんは,現代的なフットボールをピッチに表現しようとするならばごく当然に要求される要素,でもなかなか浦和では実現できなかった要素を,チーム・ビルディングの基盤として意識しているように受け取れます。


 残念ながら,何回目かの「再構築」であり,何回目かの「浦和の憲法」策定かも知れません。知れませんが,しっかりとした上屋構築物を再び構築したいならば決して避けて通ることのできない道筋であるのも,確かであるように思います。このことを真正面から見ている。そんなフットボール・コーチが今季のファースト・チームを預かる,という部分に少なからぬ期待を,個人的には持っています。