3連覇のディテール(第91回全国高校選手権・決勝戦)。

自分たちのリズムに,どう相手を引き込むか。


 この部分で,東福岡は東海大仰星の先手を取った,と言うことはできるかな,と思います。あとでゆっくりと試合そのものを書いていこう,とも思いますが,まずは試合の雑感などを手短に書いておこう,と思います。というわけで再び楕円球方面のお話,高校ラグビー勝戦であります。


 ごく立ち上がりの時間帯はある意味,決勝戦らしいものに感じられました。スコアを動かす,という意味においては東福岡がPGで3点を先取するわけですが,リズムを自分たちに引き寄せる,という意味ではまだ決定的な印象を与えるものではありません。むしろ,対戦相手である東海大仰星がどう出てくるか,冷静に見極めながら試合を動かしていこうという意図があるかな,と感じさせるようなものだったわけです。


 冷静に,戦況を見極める。


 その背後には,「隙あらば」という姿勢がしっかりとあって,直後の時間帯には,その「隙あらば」の姿勢が明確にフィールドへと表現されたわけです。恐らく,東海大仰星からすれば,ちょっとパス・スピードが緩かったであるとか,普段のパス・ワークとちょっと違う部分があったかも知れません。普段とのちょっとした違い,その違いを導いたものは,東福岡のボール・キャリアへのプレッシャーかも知れませんが,東海大仰星が誘発したちょっとしたミス,恐らくはミスと言えないほどに小さなミスだろう,と感じますが,そんなミスを東福岡は決して見逃すことがなかった。そこからの攻撃は,確かに「個」の持っている差を感じさせるものでもあったのですが,その直前の局面を考えると,チームとして徹底されている要素,相手の隙であったりミスを見逃すことなく自分たちのリズムへと相手を引き込むきっかけとする,という要素を強く感じさせるものがあったな,と思うのです。


 東福岡と東海大仰星,この2つのチームを分けた要素に,確かに「個」も作用したのだとは思いますが,個が持っている能力だけが決定的な要素だったとは思いません。試合全体から見ればごく小さな要素,そんなディテールをどこまでチームとして突き詰めているか,そんな部分の積み上げで,東福岡は東海大仰星を上回っていたように,個人的には感じます。ファイナル・スコアから見ると,東福岡と東海大仰星との差は2トライ1コンバージョン差ですが,この12点差には小さな,ディテールの差が積み上がっているように,思うわけです。