カウンターパートで最適解で(第90回全国選手権)。

かつては,メインストリームでしたけどね。


 2010シーズンまでは,第2種でのリーグ戦は単純なラウンドロビンで,2回戦総当たり制の長期にわたるリーグ戦ではありませんでした。そのためか,リーグ戦に軸足を置いたチーム・ビルディングというよりは,カップ戦を意識した戦い方をリーグ戦的に微調整する,という感じのチームが見られたように感じます。そんな流れに大きな変化を与えたのが,高円宮杯のフル・モデルチェンジではないかな,と思います。


 ひさびさに,アソシエーションなフットボール高校サッカーの話を書いていこう,と思います。


 カウンターパート,と書いた時点でどのチームに注目しているか,ほぼお分かりかな,と思います。大分であります。大分の戦い方をもとにしながら,高校サッカーをちょっと俯瞰的に眺めてみよう,と思います。


 大分の戦いぶりをしっかりと見たのは,浦和東との2回戦です。


 初戦での戦いぶりを思えば,浦和東が主導権を大分に持って行かれる時間帯は少なく抑え込めるのではないか,などとどこかで思っていたのですが,実際には大分が主導権を掌握していた時間帯が長かったな,と感じます。ごく大ざっぱな印象を書けば,浦和東がボールを奪いたい,と思っているエリアでボールをなかなか奪い取りに行けなかった反面で,大分は自分たちのボール奪取の形に持ち込めている時間帯が長かったように思います。そして,攻撃の組み立てもシンプルなものでした。ショートレンジ・パスで相手守備ブロックを揺さぶって,ではなくて,ロングレンジ・パスで相手守備ブロックの位置を下げると同時に相手のボール奪取位置を回避する。このロングレンジ・パスが,かなりの効果を持っていたように思うわけです。


 あくまでも個人的な好みを書けば,浦和東のフットボールに好感を持っているわけですが,フットボールという競技は相手よりも多くのゴールを奪うことが必要な競技で,そのためのアプローチは問われていない,というのも確かです。ゴールを奪う,という最終目標から考えて,どんな道筋がいまのチームにはフィットするのか,チームによってその解は違うと思うのです。そして,大分にとっては最近の主流である,ボールを積極的に動かすフットボールではなくて,シンプルにボールを縦に繰り出すフットボールが解であった,ということなのかな,と思います。


 タイトルではカウンターパート,という表現をしましたが,実際にはどちらが正解,という話ではない,と思っています。


 ここではかつて書いたことでもありますが,戦術はトレンドで考えるものではなくて,あくまでもチームの個性を観察することを前提に,その個性を最大限に生かすための手段であるべき,と思っています。その結果として,ボールをしっかりと動かして,というフットボールを狙うチームがあるのも当然だし,シンプルにボールを動かして,相手ゴールを陥れる,そんなフットボールを狙うチームがあっていいのも当然です。


 高校チームが,クラブ・ユースと真正面から勝負を挑む,それも長期のリーグ戦を戦う,という姿になるとともに,狙うフットボールが似た方向性になってきたのはある意味で仕方のないこと,かも知れませんが,ちょっと見るとカウンターパートのように感じられる大分のフットボールは,チームの個性をしっかりと引き出し,結果を引き寄せるための最適解であって,カウンターパートであろうとそんなことには大きな意味はない,とごく当然のことをあらためて認識させてくれる,いいきっかけでもあるように思うのです。