駅伝競走から2012的御用始め。

諸官庁が動き出すには,1日早いタイミングでありますが。


 2012年最初のエントリでございます。


 年に一度のお約束,でちょっとばかり自己分析的ブログ紹介をしますと。相変わらず,雑貨屋的にあらゆる方面の話を取り扱うブログでございます。フットボール,であればアソシエーションもラグビーも扱っております(ということはこの時期,ラグビー方面が多めであります。)。とは言いながら,ゲーム・レポートというには速報性が期待できないし,時系列に試合を追う,というよりはある側面を取り出して,試合の印象を切り出す傾向がございます。さらにはひとつひとつのエントリが長いので,さっと読むには向かないかも知れません,などの基本的な特徴は相変わらずでございます。


 という感じでありますが,まいどごひいきの方も,はじめてお越しの方も,よろしくごひいきのほど,お願い申し上げます。


 さて。フットボール(アソシエーション)方面では,セカンド・ディビジョンを制したクラブがアジアへの鍵でもある小さなカップを奪取し,ラグビー方面(大学選手権)では,ひさびさに決勝戦で東西対決が実現する,など,見所は多かったわけですが,最初のエントリは敢えて陸上競技,それも長距離の話を書いていこう,と思います(大学選手権は,またのちほど)。


 まずは,全日本実業団であります。


 端的に,日清食品グループの「強さ」が印象に残る,そんなレースでした。駅伝競走となると,どうしても順位的な上下動が出てくるものですが,今季の日清食品グループはその順位変動をかなり抑え込めていたのではないか,と感じるわけです。区間賞を取った区間も少なくはありませんから,決して「強さ」だけでなく,「速さ」も持っていたチームだと思いますが,それ以上に区間賞のアドバンテージを巧みに生かせるようなチーム構成をしてきた,という印象を持つのです。タイムの貯金をしては吐き出し,という循環ではなくて,貯金の切り崩しを最低限に抑えながら,さらに貯金ができる,そんなチームを組めたように感じるのです。対して,最終順位2位に入ったコニカミノルタは,「速さ」と「強さ」をしっかりと結び付けられないレース序盤だった,という部分にもったいなさを感じます。
 昨季は,群馬県庁へとつながる直線路,それも残り1kmを切った段階で最終的な順位が確定するほどの群雄割拠状態でした。それだけに,今季も勝負権を持っているだろうチーム,具体的には日清食品コニカミノルタ,そしてトヨタ自動車が鍔迫り合いを演じる,緊張した状態が持続するのかな,と見ていたわけですが,今季に関しては意外な形で順位が決定してしまった,という印象です。
 その中で,個人的に楽しみだな,と感じたのは旭化成であります。レース序盤にリズムをつかめなかった,という意味で見るならば,旭化成も相当に厳しい状態で序盤を戦っていました。そんな状態を立て直して,最終順位3位,というポジションへの足掛かりをつかみます。古豪,という表現を持ち出されそうになったチームが,現在進行形としての「強豪」であることを証明している,少なくともしようとしていることが感じられる全日本実業団ではなかったかな,と思いますし,個人的には(いささか気の早過ぎる話ですけど。)来季のチームがどんなレースを展開してくれるのだろうか,という期待があります。


 続いて,箱根駅伝であります。


 こちらについても,東洋大学の「強さ」が際立ったな,と感じるところです。


 誰かのチーム,という印象ではなくて,誰もがレースを自分たちから動かすことのできる能力を持っていて,主導権を握った状態でエースに襷を引き渡すことができている。エースにアドバンテージを構築してもらう,のではなくて,エースにアドバンテージを築いて襷を引き渡せたのですから,今季の東洋は間違いなく「強い」な,と。この印象は復路にあっても変わるところはありませんでした。そして,今季の東洋は昨季,早稲田が叩きだした総合タイムを8分近く縮めることに成功します。2位に入った駒澤大学,彼らのタイムを昨季ベースで見るならば,優勝争いを展開するかしないか,というレベルのタイムです。昨季,早稲田の後塵をわずか21秒という僅差で拝することとなったチームが,今季は圧倒的な差を後続につける形でゴールテープを切ってみせた。ひとつ,高いレベルに優勝争いが上がったかな,と感じる,そんなレースでした。


 このレース,ちょっと視点を変えますと。


 かなりの時間を経て記録を更新したチームが複数あった,という部分も注目だったと感じます。まずは,明治大学です。箱根駅伝で存在感を示してきた伝統校,と考えると早稲田がまずは思い浮かびますし,続いて中央大学が思い浮かぶところです。かつては,という時間枠で見れば,確かに明治大学も,ということになるのかな,とは思うのですが,なかなか「強豪」という言葉を使えなかった,というのも確かなところです。そんな状態が変化するかも,という感触は往路の段階からありました。勝負権,もちろん,東洋大学の盤石さは往路段階から見えていましたから,往路優勝であったり総合優勝という意味での勝負権にはなりませんが,過去最高位を狙う,そしてラグビーなどでも「永遠のライバル」である早稲田よりも上の順位で,という目標はかなり現実的な視界になりつつあるかな,と見ていたわけです。この目標,小田原中継所の段階でより現実的な姿になります。さすがに,2位というポジションを維持するのは難しかったかな,と思いますが,それでも過去最高位でのフィニッシュとのこと。この流れをどう引き継いでいくのか,が楽しみです。
 そして,青山学院大学です。往路は2区で大きく順位的なジャンプアップを果たしますが,往路全体で見るとまだまだ強さのバランスが整ってはいないな,という感触を持ちました。1区で流れをつくる,という意味ではまだ足らざるものがあるし,2区でのジャンプアップをどう山登りに,という側面で見ても,バランスは決して良くはない。それでも,復路でなかなかの安定性をみせていたかな,と思いますし,順位的にも過去最高位でのフィニッシュを達成しました。ちょっと前は,シードを奪う,という部分がすごく大きな目標だったチームですが,数年のスパンで過去最高位をマークできるまでになった。青山学院もまた明治と同じく,このいい流れをどう継続させていくか,だと感じます。


 東京農業大学が往路最終区で陥った状態を思うと,駅伝競走の怖さを思い知らされますが,その怖さをも含めて,駅伝競走というのは「強さ」を引き出すために何が求められるのか,いろいろと考えるところの多い(そして,他競技とも通底する部分を感じる),魅力的な競技だな,と感じます。