振り返るには、まだ早い。

まだまだ,シーズンが終わっているわけではありません。


 国立霞ヶ丘のバルコニー、あのバルコニーに再び足を踏み入れるための戦いが残っているのです。アジアへの切符を意味する,歴史と伝統のある小さなカップをめぐるトーナメントです。


 2011シーズン,というチャプターが,リーグ戦15位というクレジットを最後に閉じられてしまうのだとすれば,爪痕を明確に残したことにはならない,と感じます。
 

 ヤマザキナビスコカップの決勝戦,浦和は最初にバルコニーへとエスコートされます。


 トップ・ディビジョン残留がギリギリの目標,それだけのポテンシャルしかないファースト・チームであるならば,リーグ戦か,それともカップ戦を狙いに行くのか,などという優先順位を意識するまでもなく,国立霞ヶ丘にまでたどり着くことはできなかったかも知れません。トーナメントを駆け上がろうにも,そのためのパワーが不足していただろう,と。
 ただ,決勝戦では対戦相手との距離をはっきりと見せつけられたような,そんな印象も残っています。戦術的な理解度,チームとしての継続性など,さまざまな側面で積み上がった「厳然たる僅差の集積」を感じざるを得なかったのです。この距離が,最初にバルコニーへとエスコートされた意味であり,苦しいシーズンを戦うことを余儀なくされた大きな要因だと思うのですが,これらの僅差をちょっとずつであろうとも埋めていく,そのためのスタートが天皇杯だろう,と感じるわけです。


 今季の爪痕を,あの小さなカップに残そうとする。


 そんな思いを持っているフットボーラーがいます。スターターのポジションを奪い,熊谷のピッチに立つことを狙う,そんなフットボーラーが。であるならば,過去を思い出しながら,なんて話はまだ時期尚早だな,と思います。これからの話をしよう,と。ディフェンスでクレジットされるのか,それともミッドフィールドでクレジットされるのか,恐らくはミッドフィールドなのかな,とも思ったりしますが,そのクレジットをディスプレイで見ることができることを,まずは楽しみにしたいな,と思います。そして,過去を振り返るのはできるならば,年を跨いでからにしたいものだ,と思います。