青山学院対成蹊戦(対抗戦A)。

入替戦の可能性が広がるのか,それとも絞られるのか。


 優勝争い,とはまったく逆方向の話ではありますが,重要な意味を持った試合であることには間違いありません。青山学院からすれば,順位を確定させるための試合です。そして,その順位はポスト・シーズンを経験することなく来季の対抗戦Aを戦うことのできる位置でもあります。であれば「勝たなくてはならない」というよりも「負けたくない」という意識が強かったかも知れません。対して成蹊からすれば,この試合は「失うことのできない足掛かり」でした。「負けたくない」では足りなくて,「勝たなくてはならない」試合であった,と言うべきでしょうか。


 そんな意識の差が,立ち上がりの時間帯には見えていたような印象です。


 では,(青山学院サイドから見て,という形にはなってしまいますが)成蹊の印象を,ポイントを絞ってちょっとだけ書いておきますと。


 後半立ち上がりの時間帯が,ひとつの鍵ではなかったかな,と見ています。前半段階で見れば,まだまだ主導権をどちらかが掌握している,という印象は強くはありませんでした。確かに,前半立ち上がりの時間帯は積極的に仕掛けていく姿勢を見せていて,PGによって先制点を奪取するものの,相手に2トライを奪取されてビハインドを背負います。そのビハインドを36分のトライ奪取によって2点差にまで詰めているわけですから,この流れをどれだけ後半へと持ち込めるか,が問われていたように感じます。対戦相手に対して,自分たちの何が効果的に機能して,逆に何が機能していなかったか。相手のリズムを断ち切るためにはどのような形に持ち込むべきか。そういう整理,戦術的なイメージの整理があるかな,と警戒していたわけです。要は,後半の立ち上がりがゲームを動かすにあたって大きな意味を持つだろうし,積極的にリズムを掌握すべく仕掛けてくるだろう,と見ていたのです。しかし実際には,その立ち上がりを相手に持って行かれてしまった。この時間帯が大きかったかな,と思うのです。


 続いて,青山学院の印象でありますが。


 成蹊が狙うラグビーを真正面から受けた,という印象まではないとしても,自分たちのラグビーを成蹊に対して立ち上がりから積極的に表現する,という姿勢がフィールドから受け取れなかった,というのはもったいないな,と感じます。また,相手のプレッシャーが厳しく掛かっている局面ではないはずなのに,自分たちからミスを誘発してしまって流れを寸断してしまっている,のみならず相手に反撃の起点を提供するような形がいささか多い,という部分が気になりました。ライン・ディフェンスに引っ掛かってボール・コントロールを失う,というのではなくて,ボールを展開しながらライン・ディフェンスが見せる隙,縦に仕掛けていくことのできるスペースを狙う,という,攻撃面でのスイッチに手をかけているタイミングで,自分たちからミスでリズムを潰している,自分たちからボール・コントロールを相手に渡してしまっているような形がこの試合ではちょっとばかり多いように感じたわけです。


 攻撃面では,BKよりもFWの攻撃力が印象に残りました。恐らく,今季の青山学院はFWに相応の自信を持っているだろうな,と感じます。相手のエリア,たとえば22mライン近くのエリアからのリスタートを考えてみると,BKの攻撃力でトライ奪取を狙う,と言うよりはFW,それもモールを積極的にドライブすることを徹底していたように感じます。マイボール・ラインアウトからボール・コントロールをしっかりと維持して,モールを構築する,と。個人的には意外な印象があったのも確かですが,反面で明確な個性が感じられたことは,大きな意味があるように思います。


 さてさて。結果としては,入替戦の可能性を絞り込む方向となったわけです。


 とは言え,青山学院と成蹊との間の差が大きなものか,と問われれば,僅差がちょっとだけ青山学院に優位に働いただけ,という印象を持つのも確かです。


 ちょっと厳しい見方かも知れませんが。


 青山学院にしても,成蹊にしても自分たちのラグビーに相手を引き込む,その引き込み方が徹底されているとは言いがたい。主導権を引き寄せるために,どうしても自分たちのラグビーを表現しなくてはならない局面で,そのリズムを手放してしまう,という形が積み上がってしまったように見えます。トライ奪取直後の時間帯,相手の逆襲を受けてリズムを手放してしまったり,相手エリア深くにまで攻め込めていて,縦を狙うタイミングに差し掛かっているのにファールでそのリズムを,自分たちから断ち切ってしまったり。ミス,という存在,それも相手のプレッシャーを受けてのミスではない,アンフォースト・エラーとでも表現すべきミスが気になりました。強豪校との距離を詰めるためには,何としても潰さなくてはならない要素が,この試合では結果を分ける鍵となっていたような,そんな印象も残っています。