正面突破(第91回全国高校ラグビー埼玉県予選・決勝戦)。

ふと,“シルバーコレクター”なんて言葉を思い出しました。


 シルバーウェア,つまりは覇者の証であるシャーレやカップのコレクターという意味ならばいいのですが,当然ながら違う意味,であります。近鉄花園への指定席切符を争う最後の試合,その最後の試合で「立ちはだかる壁」を打ち崩せない,という時期が長かったのです。


 熊谷工,という壁であり,正智深谷という壁に。


 確かに,指定席切符を獲得するのは今季で5回目,4季連続ではあるのですが,正智深谷との直接対決を制して,となると,別の話になってしまうのです。たとえば昨季は90回記念大会で,埼玉県代表は第1代表と第2代表を出せる形でした。そして,代表枠を正智深谷と分け合う形でした。また,正智深谷がトーナメント敗退を喫し,違う対戦カードで出場枠を争ったこともあるのです。
 それだけに,不思議と「壁」という意識は継続してもいたわけです。そんな壁を真正面から打ち破っていった,という意識だったりします。準決勝の話(なるべく早めにまとめと同時に書いておこう,と思います。)を書く前に,決勝戦,それも雑感などを書いておりますが,全国高校ラグビー埼玉県予選のお話であります。


 さて。決勝戦へと勝ち上がってきたのは,深谷正智深谷であります。


 熊谷工,進修館(シードを保持していた頃は,行田工でしたか。)とかつてはシード枠を独占してきたチームが強豪,という形容詞から古豪,という形容詞へと近付きつつある一方で,県北勢のプレゼンスを強く示し続けているチームであります。ごく大ざっぱにチームカラーを分けるのであれば,守備面に強みを持っているのが深谷,攻撃面に特徴を持つのが正智深谷,という位置付けになりましょうが,正直なところを書けば,この決勝戦でのファイナル・スコアは予想外なものでした。個人的に深谷近鉄花園への切符をつかむのであれば,浦和との準決勝のようにロー・スコアに持ち込むような試合展開ではないか,と考えていたわけです。しかし実際には,正智深谷を効果的に抑え込みながら,しっかりと得点を積み上げていくことができていました。相手の攻撃を抑え込む,という意味での守備意識だけでなく,自分たちが狙う攻撃の形へと持ち込むための積極的な守備意識を表現できていた,ということでしょう。


 さて。正智を真正面から打ち破って近鉄花園への切符を奪取した,というのは大きな意味を持つのではないかな,と思います。


 過去数季(県予選,本大会を含めて)を振り返ってみて思うに,守備でリズムをつくるチームではありましたが,守備から攻撃への移行がスムーズだったか,であったり,相手の攻撃を抑え込むとして,自分たちから仕掛ける守備になっているかどうか(=相手の攻撃を受ける時間帯になってしまってはいなかったか),という部分で必ずしもチームのイメージが明確ではなかったかな,と思うのです。どう自分たちの形で攻撃を仕掛けるのか,が(特に本大会では)フィールドに表現できているとは言いきれない部分があったわけです。隙とでも表現すべき要素かな,と思いますが,そんな隙を潰せているのではないかな,と思うのです。本大会を眺めてみれば,攻撃面と守備応対面がしっかりとリンクしていること,バランスしていることは必須要素であるはずです。守備的にゲームを進めていても,自分たちの形で攻撃を仕掛ける時間帯,局面をつくれないと結果として,トーナメントを上がっていくことは難しい,と感じます。その意味で,深谷は2回戦の壁を破るための重要な前提を手に入れつつあるのかな,と思うのです(ちょっと好意的なバイアスをかけておりますが)。