対仙台戦(11−32)。

「確実に」勝ち点を積み上げること。


 勝ち点3奪取を積極的に狙う。そんな意識を相手に利用されて,結果的に勝ち点0にとどまる,というリスクを最大限回避しながら勝ち点を積み重ねるアプローチを,となれば今節の戦い方は決して,不思議なものではない,と感じます。守備応対面で,いまの浦和が描いていなくてはいけない戦術イメージが明確なものになりつつある,というのは大きな収穫です。


 逆に,攻撃面でどのような要素をブラッシュ・アップしていかなくてはならないか,あるいはどのような要素を落とし込んでいかなくてはならないのか,今節の対戦相手が守備応対面で高い安定性を持っているからこそ見えてきたこと,であるように思います。ということで,仙台戦であります。


 まずは,守備応対面でありますが。


 CBとセントラル・ミッドフィールドで構成されるトライアングルが,柔軟性を維持しながらゲームを動かせていたな,と感じます。そして,CBが単純に低い位置だけを取るのではなくて,縦のバランスを意識しながらラインをコントロールすることで,セントラル・ミッドフィールドとアタッキング・ミッドフィールド,あるいはセントラル・ミッドフィールドとSBとの距離感が適切に維持される,そんな時間帯が多くなったな,と感じるわけです。試合後のコメント(J's GOAL)で柏木選手や平川選手が指摘するように,アタッキング・ミッドフィールド(島崎さん的に表現すると,インサイド・ハーフ)が最終ライン近くに入っていくことでSBのポジションを上げることができて,SBのポジションが上がり目の位置を取れることでウィンガー(あるいはアウトサイド・ハーフ)がインサイドに入ってプレーできる,つまりはトップとの距離感を縮めることができる,と。その出発点になるのが,CBのポジショニングであるように感じるのです。低めに,という意識だけになってしまうと,どうしても縦の距離感が間延びすることになってしまって,なかなかボールをどのエリアで奪うのか,という戦術イメージが明確になっていかないように感じられます。実際,前節では自分たちの形でボールを奪う,というよりも,相手が描くフットボールに嵌り込んだまま,守備応対面でリズムを取り戻せずに時間を経過してしまった,という印象があるのですが,今節に関しては自分たちの形でボールを奪う,そんな時間帯がしっかりとつくれていたような印象を持ちます。


 対して,攻撃面は課題が明確になっているな,と感じます。


 ごく大ざっぱに書けば,相手守備ブロックの裏を突く動きを表現する時間帯があまりにも少ないこと,でしょう。最終ラインからのビルドアップ,という部分では,今節は比較的落ち着いてボールを動かすことができていたのではないかな,と感じます。そのときに,攻撃ユニット(ボールを収めようとするフットボーラー)のポジショニングがあまり変化しない,という部分がもったいない,と感じます。ボール・ホルダーに対して,視界に積極的に収まろうという意識でポジションを微調整する,というよりは,イニシャルのポジション,トランジション時点でのポジションでボールを単純に受けようとする形がかなり多く感じました。相手守備ブロックを引き出すために,丁寧なビルドアップを,という意識はかなり浸透してきているようで,ゆっくりとしたリズムでボールを動かすという意識は悪くない,と見ています。むしろ,もっとゆっくりと(とは言え,パス・スピードが緩いようでは困りますが。)相手を焦らすようでもいい,と思っています。


 問題は,攻撃を加速させるタイミング,の話です。


 攻撃を加速させる,縦への鋭さをどう表現するか,という部分にも関連するか,と思いますが,単独で縦への鋭さ,速さを表現しようとする形が多くて,コンビネーションを生かしながら加速させる,鋭さを表現するという局面がごく限定されてしまっている。今節,シンプルに相手守備ブロックの裏を突いて攻撃を加速させる,そんな形をもっとチームとして意識してほしい,と感じます。フリーラン,という助走があってドリブルを武器とすることができると,ドリブルがさらに意味を持ってくれるように思うのです。


 ただ,今節については大きく影を落とした要素があるな,とも思っています。ハーフタイムを挟んで大きく悪化してしまったピッチ・コンディションです。エリアによってはボールが想定よりも動く,逆に特定のエリアにボールを持ち込んでしまうと,パス・スピードが見事なまでに落ちてしまう。予想外な形でボール・コントロールを失ったり,逆にコントロールを奪い返す,そんな難しいコンディションになってしまったので,後半途中からはともかくセイフティにボールを動かす,攻撃面でも無理にリスクを背負わずに,という意識が強まったのはやむを得ない部分があるか,と思います。


 いずれにせよ,今節獲得した勝ち点は1,であります。


 理想をいうならば,確かに「勝ち点3」を奪取したかった試合となるかな,とは思いますが,フットボールをしっかりと自分たちの形で組み立てていく,という意識をしっかりと表現してゲームを動かせたことは,リーグ戦最終盤にあって勝ち点1という物理的な数字以上の意味を持ってくれるのではないか,と思いますし,その手掛かりを存分に生かしてほしい,と思います。