スカイアクティブ・ディーゼル。

RX−8が生産終了,などと寂しい話が出てきたな,と思っていたら。


 予想外のタマを仕込んでいた,と。


 今回はフットボールを離れて,マツダさんのプレスリリースをもとに,クルマな話を書いていこう,と思います。


 このリリース,表面的には2012年に投入されるSUV,“CX−5”についてのリリースのように読むこともできます。できますが,最も大事なのは,このCX−5に搭載されるエンジンについての記述,であります。タイトルにも書きましたが,本格的に国内投入される,クリーンディーゼル,であります。


 ガソリンエンジンでは,高圧縮比化を達成したマツダでありますが,今回市場投入するディーゼルでは逆に,低圧縮比化を達成しています。この,「低圧縮比」というのが環境対応の大きな鍵なのだとのことです。


 ディーゼルにとって,低圧縮比がどういう意味を持つのか,マツダさんは技術的な要点を説明しているページで丁寧に説明してくれています。詳しくはマツダさんの技術解説ページをお読みいただきたいと思いますが,要はディーゼルガソリンエンジンに近づけた,というのがマツダの“スカイアクティブ”である,という理解でいいのではないかな,と思います。


 もともとディーゼルは,スパークプラグを必要としないエンジンです。燃料を自然着火させているわけです。となると,シリンダーに取り込んだ空気を高温状態にする必要があって,そのために高圧縮比が必要となるわけです。ディーゼルは高効率,というメリットを持っている反面で,自然着火という側面から燃焼状態を最適に維持できるとは限らない,というデメリットも持っていました。ディーゼル二酸化炭素排出という側面では有利な反面で,窒素酸化物などの排出では不利とされる,その大きな要因でもあります。そこでマツダは,高圧縮比が必要とされるディーゼルで低圧縮比を狙ってきたのです。その真意は,燃焼状態の最適化を狙うこと,です。理想的な燃焼状態を作り出すことができれば,低圧縮比であってもエンジンとしての効率性はむしろ向上する。この理論を,実際に形にしてきた,ということなのです。そして,燃焼状態を適切にコントロールできたことで,排気ガスの後処理ディバイスが必要なくなった,とのことです。具体的には,たとえばメルセデスが採用している“ブルーテック”です。大ざっぱに言えば,尿素水溶液(アドブルー,と言うそうです。)を排気管に噴射してアンモニアを生成,SCR触媒で排気ガスに含まれる窒素酸化物を窒素と水へと分解する,というシステムです。このシステム,当然ながら尿素水溶液を定期的に補充するなど,メインテナンス・コストが発生します。このシステムを使わずに,窒素酸化物の発生を抑えることに成功した(マツダによれば,ユーロ6にポスト新長期規制をクリアする),というわけなのです。


 いささか地味ではありますが,技術的には相当なインパクトがあるエンジンである,と感じます。


 エンジンを高回転まで追い込まず,むしろ低回転域をうまくつないでいくだけで,相当な速度域にまでクルマを引っ張ることができる,意外な速さをディーゼルは持っています。その意外な速さを,国内メーカが提供してくれる。しかも,CX−5だけにこのクリーンディーゼルが搭載されるわけではない,ということをマツダは間接的にアナウンスしてくれてもいます。エコ,と言ってもハイブリッドだけではないし,ましてEVだけでもない。使用環境によっていろいろな選択肢があっていい,と思っているワタシとしては,すごく期待しているエンジンです。