対横浜FM戦(11−30A)。

どの試合も,同じだけの重要性を持っている。


 リーグ戦であれば,ごく当然の話です。けれど,この試合は同じだけの重要性,という言葉では収まらない試合だったと感じます。「勝ち点6」に相当する意味を持った試合,という意味で重要性があった,というわけではありません。シーズン終盤という時期に指揮官交代に踏み切り,新たなパッケージを落とし込んできた。そのパッケージで,「勝ち点3」という足掛かりを得られるのか,それとも。リーグ戦最終盤,と言うよりも全5戦のカップ戦を最後まで走り抜けられるのかどうか,ファースト・チームが試される,という意味で「勝ち点3」以上の重要性があった試合ではなかったかな,と思うのです。


 そして,初戦をしっかりと手中にした。


 いつも,よりもちょっと遅めでありますが,アウェイな横浜FM戦であります。


 さて。今節は本当に難しいマネージメントだっただろう,と思います。


 大きな枠組みとしては共通性を持ってはいるものの,その動かし方では大きな違いを持っている,4−1−4−1(島崎さんは,中盤の機能を数字に反映させて,4−1−2−3と表記してもいるようですが。)を,あまりにも短い浸透期間で実戦投入しなくてはならなかったわけですから。


 実際,まだまだ詰めていかなくてはいけない,という部分が立ち上がりの段階から見えていたように感じます。守備ブロックと攻撃ユニットとの距離感が,まだつかみきれていない状態でゲームを立ち上がったかな,と思うわけです。守備ブロック側にも,攻撃ユニット側にも堀さんが指向するフットボールを知るフットボーラーがいるのですが,やはりトップ・ディビジョンの試合ではじめて使うパッケージであること,心理的な状態などが作用して,なかなか最適なバランスを探り当てられなかった,という感じでしょうか。立ち上がりの時間帯,チーム・バランスをチェックしている段階で相手に先手を取られた,という形ではありますが,その後の時間帯で,相手がペースをちょっとだけ落としてきたことが,ポジティブに作用してくれたように感じます。積極的にボールダッシュを仕掛けてこなかったことで,ボールを保持できる時間が出てくる。ネガティブに言えば,「相手に持たされている」ということにもなりますが,浸透期間が短すぎるパッケージである,ということを考えれば,実戦負荷が掛かった状態でこのパッケージを動かすために,必要となる距離感,連動性や機動性をどう表現するのか,意識する時間帯ができた,とも言えるように思うのです。


 連動性,という意味で見るならば,やはりSBとウィンガーの関係性が大きな変更点になるでしょうし,アタッキング・ミッドフィールドとトップ,ウィンガーの関係性がより流動性を持ったものへと変化している,という部分も変更点になるはずです。当然,まだまだ荒削りではあるのですが,攻撃ユニットの戦術イメージが整ってきた,というのはかなりポジティブな変化だな,と思います。そして,ユニットとしての戦術イメージが整ってきたことで,攻撃ユニットが持っている「個」が,意味を持つようになってきたな,と。決勝戦を奪取した局面は,戦術イメージと「個」がバランスしはじめた,という感覚をアウトサイドにも強く感じさせるものでした。これまでは,クイック・リスタートを仕掛けようにも,同じ戦術イメージを描いて,確信を持ってフットボーラーが動き出している,という印象を残念ながらピッチから受け取ることが難しかったのですが,今節は確信を持ってボールを収めようと動き出していた。そして,ボールを引き出すためのフリーランをしっかりと仕掛けられたことで,コースが生まれ,積極的な個の仕掛けが,決勝点という形に結び付いた。


 大きな意味を持った「勝ち点3」を奪うことになった局面ですが,同時に今季のチームではなかなか見られなかった,反発力をこのチームがまだまだ持っている,ということを示してくれた局面でもあったように思うのです。


 やっと,浦和の11スペックなフットボールが動き出したかな,と感じます。動き出すにはあまりに残された試合数が少ないですが,少なくとも10スペックからの正常進化形であることを強く感じさせるのは,今節のフットボールであることは間違いないところでしょう。そして,リズム・コントロール,などという言葉を持ち出したくなる,ハイ・ビートな時間帯が戻ってきたことは,いまのファースト・チームが表現しやすいフットボールである,ということの裏返しでもあるように感じます。


 「戻るべき場所」が明確に見えたこと,が今節における最も大きな手応えでしょう。そして,その手応えは「勝ち点3」という足掛かりに直結した。今節の課題をクリアして,さらに熟成スピードを高めていけば。シーズン終盤にして,やっと「戦える状態」を手に入れたな,という印象を持ちます。