ストーリー。

今季から,ヤマハ発動機ジュビロを率いる監督。


 彼がよく使う言葉,であります。


 ゲーム・プラン,という言葉と限りなく同義であるときもあるけれど,戦術的な意味,あるいは技術的な側面だけを意味する言葉ではなくて,チームとして共有しておくべきビジョン,という意味と限りなく近い,そんな使い方をされることもある言葉です。


 では,堀さんはどんなストーリーを,ファースト・チームに持ち込んだのだろう,と見てみると。


 確かに,清宮さんが指摘する要素を表現してくれているな,と感じます。ファースト・チームを構成するフットボーラー,その個性を引き出すための枠組みを,リードタイムがほとんど与えられていない状態で,しっかりと落とし込むことができた。「個」を意識させる,という意味では前任指揮官との共通性を持っているけれど,サポート,関係性という要素を落としてはいない,という部分が,個性を引き出すにあたっての触媒ではなかったかな,と感じます。そして,ひとりひとりのフットボーラーが“チーム”として機能する基盤ができたことで,今季なかなか表現できていなかった反発力を示すこともできた。フットボーラーひとりひとりに対して,堀さんをはじめとするコーチング・スタッフがそれぞれの役割を明確に意識させられているのだろう,と感じますし,フットボーラーとしても,どのような部分を表現すればチームとしてのパフォーマンスを高めることができるのか,スターター,あるいはリザーブとして試合に絡んでいくことができるのか,具体的なイメージを描けるようになっているのだろうな,と感じます。


 けれど,確信を深めるにはまだまだ時間が不足している,というのも確かでしょう。


 厳しい実戦を通じて,いまのストーリー,堀さんが狙うフットボールへの理解,確信を深めていく必要がある,と。国立霞ヶ丘でのゲームはある意味,絶好の機会だと思うのです。初戴冠のカップを,再びバルコニーで掲げられるかどうか,という試合ですから,厳しい試合になるのは当然のこと,であるはずです。そんな環境で,自分たちのフットボールをどれだけ表現できるか,リーグ戦にもつながっていってくれるはずだと思うのです。


 やっと,フットボーラーの持っている個性を引き出せるストーリーへと書き換えることができた。となれば,今度はそのストーリーをおおまかなものではなく,ディテールにまでこだわったストーリーへと進化させてほしい。そのためにも,存分に浦和のフットボールを国立霞ヶ丘で表現してほしい。そして,フットボールへの手応え,確信を深めていってほしい。そして願わくば。そう,思っています。