対大宮戦(11−29)。

カップ戦で手掛かりを得たのは確かだろう,と思うけれど。


 リーグ戦に,カップ戦での手掛かりを生かすことはできませんでした。心理的に厳しい状態にある,という側面も当然に作用しているかも知れませんが,やはり戦術的な要素に「足らざる部分」がある,と感じるゲームでした。戦術的なイメージにズレを見せている部分を修正する,そもそも戦術的なイメージが不足している部分に関して,しっかりとした約束事を確立する,などの要素が積み残しとなったままシーズン終盤を戦うことになってしまった,という印象です。


 大宮戦であります。今回は戦術面,特に改善してほしい要素に絞って書いていこう,と思います。


 さて。カップ戦と今節で,何が大きく違っていたか。


 端的に書けば,相手の距離感です。トップ,あるいはアタッキング・ミッドフィールドにアプローチを仕掛ける相手,その距離感ですね。攻撃を仕掛ける,その初期段階でしっかりとボール・ホルダーを抑え込み,縦への流れを寸断する,というプランを徹底していたように映ります。


 このときに,何が不足していただろうか,と思うに,ボールを引き出してあげるための距離感,と思うのです。


 ランコ選手やセルヒオ選手,アタッキングであれば梅崎選手やマルシオ選手を誰がサポートするのか,という部分が欠けている,と。中央,あるいはサイドであるとして,一時的に数的優位をつくって局面を打開,そこからポジションを開く,というポジションの伸縮が,今季のフットボールにあっては重要な戦術要素であるはずなのですが,実際にそんな戦術要素が表現されてきた,という印象がない。あまりにもったいない,と思うのです。今節で見れば,野田選手とアタッキング,そして平川選手とアタッキングとの関係性,もちろん,セントラルとアタッキングとの関係性も当てはまりますが,そんな関係性が機能していないと,ボール・ホルダーを孤立させるだけになってしまって,攻撃を中途半端なエリアで寸断されることになってしまいます。ポジション・フットボールであっても,コンビネーションがまったく必要ない,ということはないはずですし,重要な局面でポジションを最適化させるために,その前段階でポジション・バランスを変化させる必要があるはずです。局面打開を,「個」におまかせするのではなくて,誰かのサポートを得ながら仕掛けていく,という形を構築していくことが(時間が決定的に不足しているのは確かだとしても)必要不可欠だ,と感じるところです。


 あともうひとつ。セットピースをどう位置付けているのか,何とも曖昧だな,と感じます。


 ボール・ホルダーへのアプローチが厳しく,自分たちのリズムで攻撃を仕掛けられない時間帯が積み上がっていくわけですが,そんな状態を打開できるきっかけは,何回か用意されていたはずだ,と思うのです。CKですね。
 このときに,どういう得点奪取のイメージを描いているのかな,というのが何とも曖昧に感じられます。高さ,という部分で考えるならば,今節ですと濱田選手や永田選手をターゲットに,というアイディアでしょうが,ターゲットをデコイにして,というアイディアがどのように描かれているのか,何ともはっきりしませんでした。CKそのものにしても,ほぼ同じような軌道を描いてしまっているし,サイドによってキッカーが明確に分かってしまう。相手を迷わせる,というよりは相手が「見切ってしまう」CKになってしまっているな,と思うわけです。CK,あるいはFKから得点を奪えない,という部分が,今季の戦績に重くのしかかっているような印象がありますし,それだけにしっかりとしたパターン構築が求められるように思うのです。


 今節,勝ち点0という結果はチームにかなりのダメージをもたらしているのは確かだと思いますが,課題を積み残したままでは,やることをすべてやりきったことには決してならない,と思います。止まったボールを動かす,という部分からの得点奪取,そして,「仕掛ける」局面でポジション・フットボールのメリットを生かすために,距離感を縮める時間帯をしっかりとつくること。そんな方向性を見せてほしい,と思っています。