意図あればのテスト(対ベトナム戦)。

複数の要素をテストしよう,と意図したゲームではなかったでしょうか。


 まずは,3−4−3を継続してテストしよう,という意図が明確でした。明確だったのだけれども,新たな戦力を実戦を通じてチェックしよう,という意図も見えています。3−4−3のテストについては,主力のコンディションが100%とは言えない部分がある(ピークをセットするのであれば,親善試合の段階ではなくて,公式戦段階にセットするのは当然のこと。)という部分が微妙にパラメータとして作用している。それだけに,どの程度の熟成段階にあるのか,なかなか判断が難しいところがあるように感じられるのですが,アルベルトさんとしては,公式戦レベルの実戦負荷でも耐えられるパッケージへと煮詰めていくつもりがあるようです。


 意図と継続性があれば,複雑なテストにも意味がある。国際親善試合のベトナム戦であります。


 あくまでもフレンドリーですし,ファイナル・スコアから逆算してどう見るか,ではなくて,3−4−3がどの程度の熟成段階にあるのか,という視点からこの試合を眺めてみよう,と思います。


 端的に書いてしまえば,まだまだ初期段階でしかないな,と。


 たとえば,3の視界で距離感を測る,そんな段階ではないような印象です。クラブ・レベルでどんな戦術パッケージか,を考えてみると,3を使っているクラブは少数派にとどまっていて,基本的には4の視界に慣れているフットボーラーが多いわけです。攻撃ユニットとしてのコンビネーション,あるいは守備ブロックとしてのコンビネーション,その基盤となる戦術イメージを描くにあたって,4の視界,あるいは距離感を3の視界,距離感に切り替えてから,という変換過程が挟まっているような印象がある。確かにボールを動かす,という部分では動いているのだけれど,確信を持ってボールに連動する,ボールの動きを感じて動き出す,とまではなかなか持ち込みきれていないな,と感じます。視界がちょっと違うから,どうしても距離感の修正というワンクッションが入る。パスを繰り出すにしても,あるいはパスを受けるにしても確信レベルがまだ高まってはいないから,微妙に違う距離感の中でしっかりと視界に収まることをどうしても意識しがちになる,と。しっかりと連動性を確保するためには,視界の違いに対して慣れていく必要があるでしょうし,視界,あるいは距離感の切り替えがもっとスムーズにできるには,まだ時間が必要だろう,という印象を持つわけです。


 公式戦のスケジュールから逆算すれば,慣れたパッケージでバックアッパーのテストをする,というアプローチがより自然ではないか,と映るのですが,反面で代表チームでは戦術を熟成させていくだけのリード・タイムは用意されていない,というのも確かです。ならば,親善試合で掛かる実戦負荷を利用して,新たな戦術パッケージを煮詰めていく,と。ハーフタイムを挟んで,かなり積極的な戦術交代を仕掛け,さらには戦術パッケージを3から4へ,という切り替えをしてきたことは,恐らくはバックアッパーのテストと,戦術パッケージの熟成,その双方を追った結果であろう,と感じるところです。


 この試合で,3がどの程度の熟成段階にあるのか,実戦を通じての測定はある程度できたかな,と感じます。もうひとつ。バックアッパーのテスト,という部分で見ると,ひとりひとりのフットボーラー,彼らが持っているパフォーマンスが,しっかりとチームとしてのパフォーマンスへと結び付く時間帯が多くはなかった,というところにもったいなさを感じるところですが,この試合はあくまでも「課題を洗い出すためのゲーム」であるとするならば,ヘタに課題が隠されるよりもしっかりと課題が見える方がいいわけで,その意味では意味があった試合かな,と思います。


 4日後の公式戦に向けて,この試合で出てきた課題をどうクリアして,チームとしてのパフォーマンスへと結び付けていくか。あくまでも公式戦は結果から逆算して捉えるべきものではありますが,チームとしての進化も楽しみにしたいな,と思います。