対G大阪戦(11−28A)。

今節,CKについてのスタッツはゼロ。


 J's GOALさんやオフィシャルにアップされるマッチ・サマリー,このサマリーに掲載されているスタッツだけでは,実際の試合がどのようなものであったのか,正確に理解するのはほぼ不可能ですが,このゼロという数字は,この試合がどのようなものだったのか,その一端を示すものではあるかな,と思うのです。


 アウェイ・マッチなG大阪戦であります。


 さて。CKに関するスタッツは,攻撃が相手に対する脅威として機能しなかったもの,と理解して差し支えないでしょう。トップにボールを預けて,トップから再びボールを引き出す,と。今季型のフットボールを考えると,この部分が攻撃面のベースに位置付けられるか,と思いますが,この基盤が不安定であることで攻撃面全体に不安定さが広がっていく。攻撃面でリズムをつくれない,ということになるわけですが,今節に関してはもうちょっと前の要素も考えてみようか,と思います。


 今季,残念ながら不明確なままになってしまっている,どのエリアでボールを奪うのか,という部分であります。


 指揮官が描こうとしているフットボールは,高い位置でのボール奪取を意識しているはずですし,そのためのコンパクトさですから,最終ラインは高めにセットする(積極的なライン・コントロールが求められる)ことになるはずです。では,この理想がしっかりとピッチに描けているか,となると残念ながら,という評価にならざるを得ません。この理想を描き出すための「過程」がピッチから感じ取れないのだから,はず,という推論にしかなりようがないのが実際のところです。
 ボール・コントロールを失ったあとの対応を含めて,プレッシングをどのように「組織的に」仕掛けていくのか,という共通理解をシーズンを通じて煮詰めてきた,という印象がない。そもそも,ラグビー的な表現を使えば中盤,しかも高い位置でジャッカルを仕掛ける,そのためのプレスなのか,それとも相手をしっかりと網に追い込むためのプレスなのか,今季は明確ではないままにシーズンを迎えたようにも感じられる。厳しく書けば,組織的に仕掛けるべき守備応対が,個人ベースのイメージに100%依存してしまっている。そのために,チームとして,「意図して」ボールを相手から奪う,という形に持ち込めないし,ボール奪取位置も上下動をしてしまう。守備応対面で加えて書けば,最終ラインがボール・ホルダーを追い掛ける形の守備応対になってしまうと,スピードという部分からネガティブな要素が出てくることになる。攻撃,守備両面において「個」を強調しすぎたがために,「組織」の約束事が構築されずにきてしまった,と見ることもできるでしょうか。


 根幹の話をすれば,こういうことだろうと思うのですが,もうちょっとディテールへと視点を動かしていくと,描きたいフットボール,指揮官にとっての理想と,現実的な要素である戦力とがミスマッチを起こしている,理想を描ける戦力バランスではないように思うのです。


 戦力バランスを眺めてみると,実際にはリトリート的な守備応対を意識するような構成になっているな,と思うのです。端的に書けば,どう永田選手,あるいはマシュー選手へと相手を追い込んでいくのか,と。ポジション・フットボール,という枠で見るならば,トップから逆算するコンパクト(高い位置をイニシャルとするコンパクト),ではなくて,最終ラインから考えるコンパクト(低い位置からはじめるコンパクト),ではないのか,と。であれば,この最終ラインにどう,相手ボール・ホルダーを追い込んでいくか,という約束事からはじめるべきではないのか,と。


 最低限,ボール・コントロールを相手から奪い返す,という局面で組織としての「形」を持っていないと,攻撃面で自分たちの形を持っていたところで(とは書いたけれど,確立された約束事がある,とは感じられませんが。),なかなか攻撃面での形を表現するきっかけをつかめない。ボールを奪う,という要素での不安定さが,攻撃面での不安定さにもつながっていくし,さらには「個」と戦術面とのミスマッチも重なっているから,課題がどうしても複雑に絡み合うことになってしまう。残された試合数は多くないのですから,多くの戦術課題をクリアできるような時間はありません。まして,ここまで表現できない理想に固執している時間など,どこにもない。課題が複雑に絡んだ状態をどこまで解し,戦術的な約束事を現実的な形へと絞り込めるか。その約束事をどれだけ早く共有できるか,が最優先課題として求められるはずだ,と思っています。