彼我の差(RWC・対NZ戦)。

確か,イビツァさんも指摘していたことかな,と思いますが。


 相手からの強いプレッシャーが掛かっている状態でも,練習通りにスキルを表現できるかどうか,という部分で明確な差を感じさせる試合でしたね。立ち上がりの時間帯からリズムを掌握されてしまったことで,心理面がさらに影響を与えることにもなっていたように感じます。


 いささか時期に遅れておりますが,プール第2戦であるNZ戦であります。


 それにしても,見事なまでの「完敗」であります。ごく立ち上がりの時間帯からオールブラックスにリズムを掌握されると,ほぼ彼らが描くゲーム・プランの中で試合を進められてしまった。ありきたりな表現ですが,「強さ」に「速さ」,加えて書けば「正確さ」で明確な差がある,という印象です。たとえば,ボール・コントロールを奪おうとしても,自分たちがイメージするディフェンスではなかなかボールを奪う形に持ち込めない。ひとを掛けないと,ボールをなかなか奪えない,という形になっているわけです。となると,ボール・コントロールを奪ったとしても,攻撃を仕掛けようにもなかなか攻撃を分厚くすることができない。ディフェンスを仕掛ける,ひとの強さで相手との明確な差がある,というわけです。さらに,ディフェンスに入るタイミングで,しっかりとボールをつながれる。ハンドリング・スキルにも「差」が存在している。僅差であるとしても,試合を通じて積み上がった僅差は,相当な差です。判断の速さがプレーの速さにつながっているし,正確なボール・コントロールがあるから,相手を容易に揺さぶっていくことができる。「翻弄される」という言葉が残念ながら,見事に当てはまる,そんな試合だったように感じます。


 “Great Upset”を狙う,そのためにはしっかりとしたメンバーでNZ戦に臨むべきだったのでは,などという話もありますが,ラグビーフットボールでのアップセットは相当綿密にゲーム・プランを描かないと難しい側面がある,と思っています。そして,緻密なゲーム・プランを描くのであれば,恐らく(アップセットの可能性が相対的に高い)第1戦に描いていただろう,と。瞬間風速的に,4点差にまでフランスを追い詰めた,あの段階でちょっとだけ,自分たちが描いたストーリーに相手を引き込めた,と理解すれば,試合後のJK,そして選手たちのコメントにも納得がいくわけです。


 むしろ,第2戦の敗戦は2019に向けた強化施策をどのようにデザインするべきか,という方向に向けるべきかな,と思います。


 RWCでの勝負権を持ったチーム,そのチームから受ける実戦負荷は相当なものです。その負荷を,なるべく「定期的に」受けることが重要な要素になってくるはずです。JKも新聞に寄稿したコラムで書いていますが,RWCで勝負権を持ったオールブラックス,あるいはワラビーズと定期的に戦える舞台をつくることで,彼らの戦い方を皮膚感覚で理解していく,自分たちの彼らとの差がどこにあるのか,その距離感を正確につかむことが大事な要素になってくるだろう,と個人的にも感じます。


 オールブラックス,あるいはワラビーズ,という「イメージ」で差を感じるのではなく,彼らと真正面から勝負を挑むなかで正確に彼らとの差を測る。そのチャンスを定期的に持つことで,差が縮まったのか,それとも広がってきているのかが理解できるはずだし,差の縮め方を考えるきっかけがつくれることにもなる。この第2戦だけを捉えて,「大敗」という言葉で止まるのではなくて,この差をさらに縮める,それだけでなく縮めるスピードを速めるための対策を打つ,というのが求められることだと感じています。