マセラッティもSUV、など。

なかなかに魅力的なスタイリングではないでしょうか。


 「どこかで見たような」デザイン要素も,確かにありますがね。たとえば,リア・セクションのデザイン処理にはミュンヘン方面が持ち込んだアイディアを感じさせるものがあるし,ナンバー・ブラケット付近のディテールにはシュツットガルトな雰囲気がなくもない。さらには,リア・クウォーターのデザイン処理を見ると,高島町方面の雰囲気があるような。とは言いながら,フロント・セクションを真正面から眺めれば,どこからどう見てもマセラッティですね,と納得させられるし,フロント方面からサイドを眺めれば,確かにクワトロポルテとの共通性を感じさせる面構成,と言いますか曲線構成であることが感じられます。



 さて。フットボールから離れまして,だけでなく楕円球方面からも離れまして,webCGさんのニュース記事をもとに,マセラッティが発表したコンセプト・モデルについて書いていこう,と思います。


 コンセプト,と書きましたが,実際にはほぼ最終型プロトタイプ,あるいはファースト・ロットにほぼ近いモデルをコンセプトとしてフランクフルトに持ち込んだ,と理解すべきかな,と思います。商品性,という側面で見れば,マセラッティが持っている優雅な雰囲気,そしてフェラーリとの協力体制によるエンジン,恐らくはクライスラーとの提携関係を生かしての4駆技術(つまりは,ジープ・ディビジョンの技術が落とし込まれているのでありましょう。),と相当程度のまとまりが期待できるかな,とは思います。


 思いますが,というのが個人的な感想であります。


 思うに,高級SUV、特にオンロード性能をしっかりと意識したSUVという市場の可能性を明確に示したのは,BMWであり,ポルシェではないでしょうか。BMWはローバー買収によって獲得したランドローバーの技術,ノウハウを吸収,レンジでは突き詰めていなかったオンロード性能をしっかりと意識する形でX5を仕立ててきたように感じます。またポルシェは,フォルクスワーゲンとプラットフォームと4駆技術を共有する形で“カイエン”をまとめ上げ,しっかりとポルシェのラインアップで存在感を示しています。ライドハイトを見れば,確かに一般的なセダンよりは高めにセットされているけれど,いわゆるクロカン4駆よりは明らかに低めのセットになっています。加えて,オフロードでの操縦性や安定性を意識するものではなくて,オンロード性能を最適化するためのサスペンション・セッティングが施されている。標準装着されているタイア,そのトレッド・パターンを見るだけでも,オンロード性能を徹底的に意識して仕立てられていることがうかがえます。
 気になるのはこの部分,なのですね。
 オンロードを快適に,というのであれば,一般的なセダンを選びたいな,と思いますし,4駆の性能は(実際に使う機会がかなり限られているとしても)オフロードに向いていてほしい,と思ってしまうのです。高級SUV,その源流をたどっていけば,恐らくレンジにたどり着くかな,と思いますが,初代のレンジ(クラシック・レンジ,なんて表現もしますが)は,かなり厳しいオフロード環境でもしっかりとした走破性を見せるクルマであります。そんな形であってほしいな,と思うのですね。


 純然たるフォーマルでもなく,でもカジュアルなだけでもない。限りなくフォーマルに寄ったカジュアル,ひととはちょっと違ったスタイルを,という意識が高級SUV市場を支えているのでしょうし,個人的にはそんな思いに共感したいところもあります。けれど,コンサバな見方だとは思いますが,オフあっての4駆であってほしいところがやはりあって,そうなるとどうしても,個人的にはディフェンダーランクル(のシンプルなモデル),あるいは日本市場からは駆逐されてしまいましたが,日産のパトロールなどに魅力を感じたりするのです。