対大宮戦(2回戦・第1戦)。

やはり,機動性や流動性,連動性という方向軸にある「個」なのだな,と。


 水曜日のカップ戦は,シーズン終盤に書けてのひとつの「指針」だろう,と思います。そして,いまの浦和がどんな戦力的傾向を持っているのか,あらためて明確に示した試合である,とも感じます。


 今季,流動性や機動性を持ったフットボールを戦術的な基盤とはしていないし,であればシーズンを通じて熟成されている,という形でもないわけです。それでも,流動性を強く意識したフットボールで90分ハーフのカップ戦,その前半を2−0で折り返すことができているし,チームとしての機能性を取り戻したことは,大きな収穫です。
 ネガティブな流れを断ち切ったこと,そのことは最大限に評価しなければいけないのだけれど,この試合で表現されたフットボールは,今季意図してきたはずのフットボールが,この時期にあっても「戻るべき場所」になっていなかった,ということを示しているように感じるのです。試合後のコメントを読む限り,コーチング・スタッフが,と言うよりも,ピッチで実際に戦うフットボーラーがどのようなフットボールを描けば浦和の持っているポテンシャルを引き出せるのか,という意識を持っていたようにも映ります。


 「個」を最大限に生かす,そのための「組織」を構築する,と。


 まったくもって,異論を差し挟む余地のない基本方針なのですが,「個」がどのような方向軸にある個なのか,しっかりと「観察」していたのでしょうか。指揮官が,しっかりと戦力を観察した結果として,流動性や機動性を基盤とするフットボールではなく,違った方向性のフットボールを選択した,というのであれば,もっと徹底的に戦術的な約束事が落とし込まれていて不思議はないし,もっと早い段階で戦術がピッチに表現されていてもおかしくありません。
 でも実際には,今季型の戦術はあまりにギクシャクした形でしか,ピッチに表現されることがなかったし,チームが機能性を取り戻したかな,と思わせるタイミングには,どこか機動性や流動性,連動性を感じさせるフットボールが顔を見せていたようにも感じます。理想だけを意識している時期ではないはずで,現実的にどのようなフットボールが「いまの浦和」を動かせるのか,このカップ戦はひとつの解を示しているはずです。


 ネガティブな流れを押しとどめ,今度はポジティブな方向へとギアを駆動する。


 そのときに,浦和が持っている「個」の方向性に忠実なフットボールを描き続けることができるかどうか。シーズン終盤であればこそ,明確な方向性をチーム全体が共有してほしい,と思います。