手応えになる初戦(RWC・対フランス戦)。

JKが掲げた,野心的だと思われた目標。


 恐らく,その目標となっている試合は違う試合だと思いますが,少なくともJKが掲げた目標は野心的,という形容をすべきではないかも知れない。もちろん,強烈な負荷が掛かった状態では,いままでの課題,それも小さな課題が決定的な課題になりうるし,頂点への勝負権を意識するようなチームはそんな小さな課題を見逃したままにしてくれる,などいうことがあり得ないのも確かです。この試合,何が問題だったのか,正確に把握することを通じて,目標は現実味を増していくものと思います。


 RWC初戦である,フランス戦であります。


 ラグビーフットボールは比較的,実力差がファイナル・スコアへと反映されやすい競技ではありますが,それでも“UPSET(この試合で考えるならば,“GREAT UPSET”という表現がより正確でしょうか。)”が100%あり得ないか,となればそんなことはありません。そして,「ともすれば」と思わせる時間帯をこの試合ではつくれている。このことは,明確に手応えになる,と感じるわけです。
 しかしながら。“UPSET”な状態へと相手を引きずり込むのであれば,立ち上がりの時間帯は大きな鍵になるはずです。相手に違和感を感じさせる,その違和感をできるだけ持続させるためにも,自分たちから仕掛ける,リズムをつかむ姿勢を押し出すべき時間帯だと思うのですが,その時間帯の戦い方が,結果として中途半端だった。このときにリズムを引き寄せられなかった要素になるのが,小さな課題だと思うのです。自分たちが犯してしまったミスを,相手は見逃すことなくトライへと結び付けています。ディテールをどこまで詰めていけるか,という部分で,まだ潰していくべき課題がある,ということになろうか,と思いますし,試合後のJKのコメントは,この部分を指しているように思うのです。


 ただ,本来の意味での「手応え」を感じることのできる試合でもあった,と感じます。


 前半終了時でのスコアは,11−25。2トライ2コンバージョン差,であります。リズムをつかみかけながら,結果的には相手にゲームを動かされている,という形で前半を終えているし,決していい形でハーフタイム,というわけではありませんでしたが,後半途中までの戦いぶりは,ラグビー・ネイションズ相手にも,いまの日本が狙うラグビーが機能することを感じさせる,そんな戦いぶりであったように思います。そして,その基盤にあったのはしっかりとした守備応対だったかな,と思います。エリアを奪う,という側面から見れば,限りなくトライを奪われかけた時間帯を,しっかりとした守備応対で切り抜けることができた。そして,そこから逆襲のチャンスを窺い,しっかりとトライへと結び付けていく。瞬間風速であろうと,ラグビー・ネイションズを4点差にまで追い込んでいったのは間違いないこと,です。


 RWC初戦という真剣勝負の舞台で,「善戦」ということを評価すべきではなくて,結果を奪えなかったことを意識すべき,という見方もあるか,と思います。そして,ラグビー・ネイションズ相手だからこそ,その悔しさを明確に意識しておくべきだ,と。
 当然の見方ですし,その通りだと個人的にも思います。
 ただ同時に,これまでのRWCでは相手を追い込むような戦いぶりを示すことができていなかったのも確かなのです。悔しい,という印象を残せる,というだけでもRWCで2勝,という目標が現実性を持ちつつある,と感じるわけです。ならばこそ,フランス戦での「手応え」を今大会での目標につなげていくことが,最も意味あることだと思うのです。