契約解除。

「足らないピース」が,透けて見える。


 何らかの変化が必要なタイミングであることは確かだと,個人的にも感じますが,GMとの契約解除だけが「事の本質」なのかな,と感じざるを得ません。ポジティブな変化があってほしい,とは思いますが,決して楽観を許す状態ではないことも,また確かだと感じています。


 ゲームのことにも関連してくる話かな,と思いますが,今回はゲームの話に先行してこちらのリリースをもとに書いていこう,と思います。


 ジェリコペトロヴィッチというフットボール・コーチ,彼が持っている戦術的なビジョンと,GMが描くフットボール,その間に共通項があったのでしょうか。それ以前の問題として,浦和というクラブのマネージメントという視点を,GMが持っていたのかどうか。浦和のフットボールを,そして浦和というフットボール・クラブをどのようにして進化,熟成させるのか,という視点を。チーム・マネージメントだけでなく,クラブ・マネージメントという視点を含めて仕事をしていたように映る,森さんのようなひとがいるならば,確かにGMは必要不可欠なポジションである,と確信を持てるのですが,いまの浦和が置かれている状態を冷静に見れば,GMというポジションが機能しているとはまったく思えないし,必要だとも思えない。アウトサイドから見ているだけでも,このような「根幹に関わる」問題があるのだから,決して驚くべきリリースなどではありません。
 ファースト・チームをどのようにしてバックアップしていくのか,という視点から見ても,やはりこのリリースは不思議な印象を何ら持たないものです。招聘過程に関与していない前任指揮官へのバックアップが薄かった,というのは,(到底是認できるものではないとしても)まだそれなりの理解が及ぶものです。しかしながら,ジェリコペトロヴィッチを指揮官に,というタイミングにはGMというポジションにいたのは間違いことです。意思決定過程に関与していなければならないポジションなのですから,「自分が選んだ監督」に対して,しっかりとしたサポートをしていくべき立場でしょう。でありながらサポートが薄かったようにしか映らない。


 と,何らの違和感も感じることのないリリースなのですが,「足りないピース」があるように,少なくとも個人的には感じています。誰が責任主体なのか,契約解除という事態に立ち至っても見えていないことに,強烈な違和感を感じるのです。「誰か」の意思で今季のチーム・ビルディングが始まったとしても,正式にこの方向で動く,となったときには「クラブの」意思であるはずです。なのに,そのクラブの姿が見えていない。GMとの契約を解除することで,「外部からの圧力」を弱めようとしているだけなのではないか,と。


 競技場へと足を運ぶひとたちを「顧客」と位置付けるのであれば,確かにCSという視点でマネージメントをするだろうな,とは思います。しかし。フットボール・クラブの中核であるファースト・チームは「市販車」に位置付けられる,とは思わないのですね。


 ファースト・チームはむしろ,レーシング・マシンに位置付けるべきなのではないでしょうか。


 レーシング・マシンに求められるのはクレーム処理ではなくて,戦闘力を取り戻すためのトラブル・シューティングであるはずです。それも,徹底したトラブル・シュートです。アウトサイドから見る限り,どういう方向に11シーズンのマシンを熟成させていくのか,その方向性が見えていない。そもそもセッティングしようにもフレームに問題を抱えているのではないか,という厳しい状態です。そんな状態にあって,セッティングの迷宮に嵌り込んでいる時間的な余裕など,どこにもないはずです。すべてのセッティングをイニシャル状態に戻してでも,リセッティングをするのであればしていかないといけない,かなり厳しい状態であるはずです。そんな状態にあって,権限が不明確な,それも今季のマシンを設計したのか,それともマシン開発にあたってのリソース調達にあってもどれほどの仕事をしてきたのか,明確に感じ取ることのできないひとがその役職から退いたとして,どれほどの効果があるのか。


 シーズンもすでに逆算で考えるべき時期に,根幹からのリセッティングまでを考えなければならない状態である,そのボタンの掛け違いがどこから生じたのか,どうもTOTでも見えなかった。「見ようとしていない」からこういう事態に至っているのだ,と感じます。