対北朝鮮戦(なでしこ・ロンドン五輪最終予選)。

大きな,本当に大きな意味を持った「勝ち点1」でした。


 真夏の阪神甲子園で開催されているのか,と思うほどの過密日程で戦われる短期決戦,でありながら1回戦総当たりのリーグ戦でもあって,「過酷」という言葉だけでは表現できないものと思います。さらには,必ずしも自分たちのリズムで加速できているわけでもない。戦い抜くためのペース,あるいはリズムがなかなか安定しない。そんなリーグ戦にあって,「勝ち点0」に終わった試合がひとつもない。このことが出場権獲得を導いた大きな鍵であるはずですから,もっと大きく取り上げられるべきだし,もっと評価されていいと思います。


 最終予選,その第4戦である北朝鮮戦であります。


 この試合だけを取り出してみると,自分たちが描きたい,描くべきフットボールを相手に表現されてしまった試合である,ということになりましょう。韓国戦でもボールがなかなか落ち着かなくて,相手にボールをコントロールされる時間帯が長くなっていて,守備応対面でも自分たちから仕掛ける守備ではなく,相手に引きずられるような形での守備応対からなかなか抜けられない,という形に陥っていましたが,この試合もほぼ同じような図式に嵌り込んでしまった,という印象です。


 思うに,パスの微調整がなかなか効かなかった,という部分が作用しているかな,と感じます。距離感,という部分に問題がある,というよりは,繰り出すべきパスの強さと,ピッチ・コンディションとの調整がなかなか進まなかったのかな,と感じるわけです。そして,韓国にしても今節の北朝鮮にしても,そんな不安定なパス,特に距離感が短めのトラバースであったりビルドアップの初期段階となるパスを狙ってボールを奪いに来ていたようです。そのために,自分たちが攻撃を組み立てよう,というタイミングでボール・コントロールを失っていく局面が多かったように映るのです。ミッドフィールドで,しっかりとボールを保持しながらエリアを上げていく,という形になかなか持ち込めず,むしろエリアを低く抑え込まれることになりかねない。確かに,厳しい試合でありました。


 勝ち点3,というよりは勝ち点1を確保できれば。そんな流れでしたが。


 先制点を奪取したのは,なかなかリズムを自分たちに引き寄せ切れなかったなでしこで,あの時間帯はシンプルにボールが動かせていた,という印象です。「勝ち点3」という可能性が見えた時間帯だったかな,と思います。この局面のあと,アディショナル・タイムを含めた時間帯,どのようにゲームをクローズするか,という部分で,この試合のもうひとつの鍵があったかな,と感じます。ダッグアウトは試合をスローダウンさせることを狙ったのだろう,と思いますが,ちょっとスローダウンが急激になってしまったかな,と。攻撃面でリズムを引き戻しつつある,というタイミングだっただけに,ちょっともったいなかったかな,とは思います。
 でも,ゲーム全体を見れば,「勝ち点3」を獲り逃した,と見るよりは「勝ち点1」を確保した,と見る方が自然かな,と思いますし,何よりも「勝ち点」を積み上げることができている,というのはしっかりと評価していかないといけないこと,です。


 そして,第4戦の勝ち点1が,「他力」を自分たちに引き寄せる大きな要素にもなっていくわけです。


 勝ち点3奪取に近付いた,つまりは自力での出場権奪取に近付いたことを考えて,他力での出場権奪取を低く見る,そんな見方があるとすれば,ちょっともったいない見方かな,と感じます。確かに,「勝ち点3」の可能性はあったけれど,アディショナル・タイムですべてを失ったわけではありません。確保すべき勝ち点を,確保しているのですから。難しさ,という意味では最も第4戦が難しかったと思いますが,「負けない強さ」を表現できたことはしっかりと評価されるべきかな,と思うのです。


 ともかく。指定席切符の奪取,というタスクを第4戦終了時点でクリアしてみせたチームに,敬意を表したいと思います。