対北朝鮮戦(アジア3次予選)。

簡単に「勝ち点3」を奪える試合なんてない。特に予選という舞台では。


 当然と言えば当然のことですが,そのことをはっきりと思い出させてくれるような,そんな試合でした。ブザー・ビーターと言うにはちょっと早い時間帯だったけれど,「勝ち点3」を引き寄せたヘッダー,あのヘッダーまではさすがに長く感じました。そして,これが予選というものだ,と。


 さて。3次予選初戦,北朝鮮戦であります。


 ちょっとだけ,パッケージな話をすれば,本田選手が負傷したことによって攻撃ユニットに変更を受けています。アタッキング・ミッドフィールド,その中央に柏木選手が入る,と。逆に見れば,あとは大きな変更を受けてはいないパッケージでありました。このパッケージ,それほど悪くなかったと思っています。柏木選手のイメージと,攻撃ユニットのイメージがいい形で重なる時間帯をつくることもできていた。


 この時間帯,「縦」をうまくピッチに描けたな,と感じます。
 ちょっとテニス的な言い方をしますが,柏木選手は北朝鮮の守備ブロックが構築しているネット,その背後をロビング・パスで突く。パスそのもので,ちょっとした「タメ」ができていた。柏木選手の狙いに反応して背後のスペースに侵入していた忠成選手が,ヘッドで合わせに行く。パス交換でリズムをコントロールする,というのとはちょっと違うけれど,この局面でも緩急のアクセントがかなり明確に付いていて,面白いアイディアだな,と感じました。ただ,最終的なフィニッシュへと結び付いていなかった(ボールを,ゴールマウスに沈めることができなかった)ことで,「手応え」が不十分な状態に終わってしまったことがもったいない,という感じです。


 と,この局面に限らず,なかなかフィニッシュが決まらない,と言いますか,フィニッシュに持ち込むところで相手守備ブロックに引っ掛かる局面が積み上がってしまったな,という印象は確かに強く残る試合です。ある意味,相手のゲーム・プランに嵌り込んだまま,なかなか抜け出すことができなかった,という言い方もできるかも知れません。
 ですが,相手が描いたゲーム・プランはほぼ予想されたものですし,「対アジア」を思い返してみても,なかなか綻びを見せない守備ブロックに対してさまざまな揺さぶりをかける,というアプローチを繰り返していかないと,なかなかフィニッシュに結び付くことがない(どころか,前掛かりの意識を逆手に取られて,カウンター・アタックを受ける)のも確かなことです。その意味で,この試合では焦っている感じがしなかったこと,自分たちのやり方で相手守備ブロックを崩していこうとし続けたことが大きかったかな,と感じます。


 ゲームをどのように戦うか,という部分では「予選」を強く意識し過ぎることはなかったのだろう,と感じるのですが,やはり「予選初戦」は心理面にどこか影響するところがあったのではないかな,と感じます。


 勝ち点3を奪取してスタートを決めるのか,それとも勝ち点2(この試合では,ほぼ考慮から外していい選択肢だと見ていましたが,最悪のケースでは勝ち点3)を減算された状態で初戦を終えることになるのか。ホーム・アンド・アウェイなリーグ戦ではありますが,短期決戦の要素が強いリーグ戦ですし,アウェイ・マッチとの試合間隔を思えばネガティブなイメージを残すような試合をするわけにはいかない。


 心理面で,ちょっとしたリミッターが掛かってしまったかな,「勝ち点3」を奪ってアウェイ・マッチに,という意識とともに,「負けたくない」という意識も相当に強かったのではないかな,と感じたわけです。ちょっとすると近い意識なのだけれど,微妙に意味するところが違う。この意識が,必要以上に試合を難しくしてしまった要因かな,と思うところです。
 とは言え,「予選」が持つ雰囲気がどういうものなのか,ホントの実戦がどんなものなのか,しっかりと体感したものと思いますし,その雰囲気のなかでどう自分たちのフットボールを表現すればいいのか,手応えがあったものと思います。その手応えを含めて,「勝ち点3」は大きな収穫である,と感じます。