歴史的大敗。

これまでも,主力選手を抜かれることはあったのですが。


 それでもバランスを崩すことはなかったわけです。しかしながら,今季は明確にバランスを崩してしまった。アーセンはオールド・トラフォードでのアウェイ・マッチにあたって8人の選手を欠く状態だった,という説明をしていますが,実際には「抜かれた」選手がどれだけ,ガンナーズフットボールにとって重要だったのか,を示しているように思うわけです。


 ちょっとばかり古めの話になりますがスポーツナビにアップされたニュース記事をもとに,アーセナルのことについて書いていこう,と思います。


 さて。アーセンが当時の本拠地であるハイブリーを仕事場として以降,なかなか巧みなチーム・マネージメントをしてきたな,と感じます。緩やかに,でも着実に“one-nil”だけを狙っているかのようなフットボール,クラブに安定感をもたらしてきた大きな要素であるとしても,“boring”という評価が付きまとってきたフットボールからのシフトを進めてきたな,と感じます。もちろん,どこかにリアルな,かつてのアーセナルを感じさせる要素が見えているときもあるけれど,基本的にはかつての姿とは違ったフットボールを表現するようになっている。
 同時に,メルカートでの動き方も独特なものがありました。
 高い能力をすでに示しているフットボーラーを獲得する,という方向に軸足を置かず,ポテンシャルを持っているフットボーラーを獲得して,アーセンが狙うフットボールでの大きな構成要素にする,と。今季,リーガ・エスパニョーラを新たな主戦場に選んだ(正確には,本来の主戦場へと戻った,と言うべきかも知れませんが。)セスク・ファブレガス選手,そして,シティズンズへと移籍したサミル・ナスリ選手もこの文脈で説明できるかな,と思うのです。


 思うわけですが,昨季終了時点で彼らがどんな意味を持っていたか,と。


 ガンナーズが描くべきフットボール,そのフットボールに必要不可欠なフットボーラーではなかったかな,と思うのです。で,彼らが抜ける,となったときにガンナーズ,と言いますか,アーセンはどのような対策を打ったのだろう,と思い返してみると,メルカートでの動きは不思議なほどに静かだったような印象を持つわけです。アーセナルは,イングランドでのリーディング・クラブであることは間違いないのですが,メルカートでは決して大きな投資をすることがない。恐らくは,フィナンシャルな側面も意識しながら動いている,ということだろうと思いますが,無理に主力級選手の獲得に動くことがない。ポスト・セスクについても同じだった,と思うのです。いつだったか,フェイエノールトロッテルダムも主力が複数移籍していったにもかかわらず,それほど大きな動きをメルカートで見せてはいなかった。その後の戦いぶりはどこか,今季のガンナーズと共通する要素を感じさせるものがありました。


 ガンナーズのチーム・バランスを構成する,重要なフットボーラーが欠けているわけだから,昨季のような戦い方を維持できるわけがない。にしても,オールド・トラフォードでのファイナル・スコアは「衝撃的」と言う以外にはないな,と感じます。ガンナーズは,韓国代表の朴主永選手を獲得した,と言うアナウンスをしていますが,果たして失われたプライマリー・バランスを取り戻すことができるのか。まだ,メルカートで動くべき必要性があるように,個人的には見ています。