関係者が語るVK45。

耐久仕様への「最適化」ができたこと。


 ごく簡単にまとめてしまえば,このようなことになるのかな,と思いますが,この「最適化」には日産の経験が生きていたのだろう,と同時に思います。そして以前も書きましたが,チャンピオンシップを狙えるパッケージ,メインテナンス体制を含めたパッケージを構築できていることが,参戦初年度(とは言え,ファクトリーとしての参戦ではなくて,技術支援という形ではありますが。)からの好成績につながっているではないかな,と思っています。


 さて。スポーツ・プロトタイプな話をニスモさんの特集ページ(リンクはトップページ)をもとにしつつ,ちょっと短めに。


 さて。今回紹介した特集ページ,すごく読み応えのある記事に仕上がっています。ですので,個人的に興味深く思ったところを必要最低限,参考にしながら書いていこう,と思います。


 まず,この記事が直接は触れていないけれど,どこかで最適化作業の基盤になっていたのはVRHでの経験ではなかったかな,と感じます。当然,当時の空力特性とはまったく違いますから,VRHとまったく同じ設計,ちょっとだけ書いてしまえば,吸排気系に関する基本設計をすればそのままVKの最適化作業が終了するはずもないわけです。しかし。少なくとも,フロントエンジン・レイアウトを前提として設計されている補機を装着した状態で,所期性能を引き出しているVKを,違った補機をセットしても同じようなパフォーマンスを発揮できるように仕立てる,しかもスプリントを念頭に置いたパフォーマンスではなくて,長時間にわたって安定したパフォーマンスを,となると,やはり「過去の経験」はある種のフォーマットになっていたのではないか,と思うのです。たとえば,同じくオープントップなスポーツ・プロトタイプであったR391,このときの経験がVKをモディファイするにあたってのヒントになっているのではないかな,と思うわけです。


 ただ,耐久は準備をどれだけしっかりとしていても,それだけでは難しい,というのも確かです。やはり,「総合力」なのです。その意味で,「勝負権を持った」パッケージを構築できたこと,が最も大きかった,と思います。


 実際にレースをオペレートしているレース屋さんも,かなりのチカラを持っています。グリーブスにしてもオレカにしても。彼らが緻密なレース・オペレーションを遂行できる能力を持っている,というのは,耐久で要求される「強さ」,その鍵のひとつかな,と。安定したパフォーマンスを引き出せるエンジンだからこそ,彼らの緻密なレース・オペレーションが生きる,とも言えるかも知れません。
 そして,シャシーコンストラクターであるザイテックとの関係性も,VKの持っているパフォーマンスを引き出すにあたって,大きな要素となっているはずです。ザイテックはVKのメインテナンスも担当していますから,エンジン屋,そしてシャシー屋としてのアドバイス,VKを耐久仕様へとモディファイするにあたっての「実戦的な」アドバイスが日産方面,ニスモ方面へと送られていたでしょうし,ニスモさんとしてもザイテックからのアドバイスが,最適化作業の方向性を見定めていくにあたって重要な要素になっていたのだろう,と感じます。


 これらの要素,そのどれかが欠ければ,恐らく初年度からの好成績は難しかったでしょう。すでにVKはマークされるべき存在になっているようですし,それほど大きなアドバンテージをライバルに対して構築できているわけでもないようです。反面で,VKに興味を持つレース屋さんもある,とのことですから,まだまだ日産がLMPで存在感を高める余地はある,と見ていいように思います。