パッケージよりも(対エジプト戦&対韓国戦)。

当然ながら,構成要素は違うわけですけども。


 特に攻撃面では,相似形を描いている印象でした。アルベルトさんと関塚さんが,しっかりと戦術面をすり合わせている,という部分もあるのかも,ですが,結果的に狙っている方向性が似てきているのかな,と。悪くないな,と思います。


 札幌ドームでの2連戦,U−22のエジプト戦と,キリンチャレンジカップの韓国戦であります。ありますが,いつも通りに時期に遅れた形になっていますので,2つのゲームをセットで書いていくことにします。


 さて。まずはパッケージな話をしておこう,と思います。U−22のクレジットを見てみると,4−4−2であるようにも受け取れますが,実際のパッケージは2トップが縦にギャップを持っている形,もうちょっと横方向の距離感が開いて,ウィンガーであるとも考えられるような感じであります。対して,フル代表のパッケージは,前任指揮官時代からキャリーされているパッケージ,4−2−3−1(と言いますか,トップとウィンガーの距離感を強調すれば4−2−1−3)でありまして,ともに1トップ,という表現を使える形かな,とは思います。


 思いますが,であります。


 2つのチーム,攻撃ユニットとして得点を奪いに行く,という基本アイディアだな,という部分が興味深いな,と感じるわけです。アンダー世代であれば,大迫選手にどれだけいい形でボールを繰り出せるか,という形ではなくて,アタッキング・ミッドフィールドの直輝選手やウィンガー的な位置関係を取っていた永井選手に東選手など,フィニッシュを狙えるスペースを奪った選手,ゴールを奪いに行ける選手にゴールを奪わせる、というフットボールだな,と感じたわけです。そして,この印象はフル代表にあっても同じことです。忠成選手をフィニッシャーとして位置付けて、忠成選手にいい形でボールを,というアイディアでフットボールを動かしてはいない。アタッキング・ミッドフィールドをイニシャルにしている香川選手も得点力を持っているし,岡崎選手ももっている。もちろん,本田選手の攻撃性をも生かしたい。彼らをユニットとして捉えて,そのユニットとしての攻撃性を引き出そう,というアプローチだな,と感じるのです。


 となると,積極的なポジション・チェンジが基盤にあるのかな,となりますが,実際にはそれほど積極的なポジション・チェンジを仕掛けているようには感じませんでした。


 この部分,アンダー世代とフル代表で違いを感じさせる部分,であります。


 アンダー世代は,直輝選手の特性を生かしながら,同時にポジショニング・バランスをどのようにして確保するか,という意識を持っていたような印象です。縦方向,そして横方向のスペースを突く,そしてチーム全体の流動性を促していく,というのが直輝選手の特性であり,強みです。この強みが,このチームに新たな可能性を持ち込んだかな,と感じるところであります。


 対してフル代表では,欧州的なポジション・フットボールのように,ポジショニング・バランスを意識している時間帯もあるわけですが,攻撃を仕掛けていくタイミング,その攻撃を加速させるタイミングでのポジション・ブレイクがスムーズに機能しているな,と。フィニッシャーに,いい形でボールを繰り出すためのポジション・ブレイク,ではなくて,攻撃ユニットの誰かが,シュートレンジへと侵入していくためのポジション・ブレイクであったり,相手守備ブロックを揺さぶり,フィニッシュへのスペースを生み出すためのポジション・ブレイクであり。
 また,フル代表で印象に残っているのは,1on1での強さを自然と表現できるようになっていること,でしょうか。守備応対面でも,1on1での対応が機能するようになっているから,守備応対で数的優位を構築しながら、というステップを踏まなくていい時間帯をつくれるようになっている。いわゆる,フットボール・ネイション的な「強さ」とまったくのイコールではないのだけれど,「鋭さ」を持った「強さ」と言いますか。フットボール・ネイションを主戦場とするフットボーラーが増えてきたこと,そのポジティブな効果が守備応対面に出ているかな,と感じるところです。


 と,ポジティブな要素がかなりあったゲームでありますが。


 修正すべき課題もまた,しっかりとあったかな,と思います。アンダー世代は当然,立ち上がり方でしょうね。相手のフットボールをまともに受けてしまっている,とまではいかないまでも,自分たちのフットボールを相手のフットボールに応じてどのように表現するか,というような立ち上がりではなかったのは確かです。どっちつかず,な状態でゲームに入ってしまったような形に見えて,その結果として先制点を奪取されることになった。ここは間違いなく,修正していかなくてはならない課題でしょう。
 対してフル代表は,やはりゲームをクローズしようか,という時間帯が修正すべき部分でしょうね。インターナショナル・フレンドリーで,戦術交代枠も広く設定されていますから,チーム・バランスが戦術交代によって想定よりも不安定な方向に傾いた,という要素もあるかも知れませんが,守備ブロックにかかる負担がちょっとばかり重くなり過ぎていたように感じます。さらには,誰が誰に付くのか,ゾーンからマンマークなディフェンスへと切り替えるとして,そのタイミングが不明確なままに相手の攻勢を受け止めざるを得ない時間帯になってしまったのはもったいないな,と感じます。さらには,セットピースからの対応でも,誰が誰に,という部分で徹底しきれていない部分を感じました。


 とは言いながらも。渋い結果で予選に入っていくよりも,はるかにポジティブな姿勢で予選を戦える,というのは間違いなく大きなことでありましょう。この流れをしっかりと予選に持ち込んでいってほしい,と思います。