対神戸戦(11−20)。

45:00からの印象に限定すれば,違った結論もありそうですが。


 ゲーム・クロックが45:00を示すまでの戦い方,そして試合への入り方を見逃していい,ということにはならないように感じます。勝ち点0,という状態からの反発力,45:00からの攻撃面は評価していい,とも思いますが(にしては,いささかリスクを背負う方向へと傾き過ぎていたようにも感じますが),そもそも相手に主導権を奪われる,しかも自分たちから相手に主導権を譲り渡すかのような戦い方をしていて,「勝ち点3」奪取に失敗した試合,というわけにはいかない。


 相手が描いていただろう,ゲーム・プランを表現させてしまった,と言うか,自分たちから相手のゲーム・プランへと嵌り込んでいってしまった,と言うべきか。いずれにしても,この試合の鍵は前半の時間帯にあった,と感じます。神戸戦であります。


 ごく簡単に言えば,距離感が中途半端だったように感じます。攻撃面においても,守備応対面においても。


 攻撃面で考えれば,デスポトビッチ選手にボールを預けたあとの距離感が,どうも適切な距離感からは外れていたような印象です。相手は,デスポトビッチ選手にしっかりとボールを収めさせない,競り合いで先手を取って攻撃リズムを寸断する,という意識を徹底させて守備応対をしてきた,という印象ですが,そのゲーム・プランを崩すための方策がなかなか見えてこなかった。ボール・コントロールを意識していたことは確かに受け取れるのですが,実際には自分たちのボール・コントロールが効いてはいなくて,ルーズになったボールを相手に収められる,という形に陥っていたような感じです。
 トップにボールがいい形で収まらないから,結果として高い位置でのボール・コントロールが効きにくくなってしまっている。となると,ロングレンジ・パスというよりはミドルレンジであったり,ショートレンジでボールを動かしながら,という形に傾いていく。そうなると,今季型のパッケージが持っている距離感が,かえってネガティブに作用することになるわけです。


 今季型のフットボールは,イニシャル段階でワイドに,という意識を徹底させています。そのために,特定のエリアでの数的優位,という考え方は機能しにくいし,コンビネーションで相手を崩す,と言うよりは攻撃ユニットの突破力をサポートしながらバランスを意識してポジショニング・バランスを取る,というイメージを意識しているようです。そのために,距離感を縮め,あるいは広げて,という動きはなかなか表現されにくい。この部分が,守備応対面でネガティブに作用すると,失点へとつながっていくように感じるのです。


 で,守備応対面に話を持っていきますと。


 今節は,どうも軸足が定まりきっていない,という印象でした。今季は,ゾーン・ディフェンスではなくてマンマーク・ディフェンスを基盤としているはずなのですが,今節に関して見るならば,どうもマンマークとは言いにくいし,だからといってゾーンの意識を徹底させていたか,となるとそれも違う。誰が誰に付くか,誰を見るのか,という約束事が徹底されていた,という印象を,少なくともピッチから感じ取れなかったのが前半段階だったか,と思うのです。誰が誰のマーカーなのか,どのエリアまでそのマークを外さないのか,という意識が中途半端になっていたのかも知れない,という印象を受けたのが先制点を奪われた局面だったように感じます。
 追加点を奪われた局面を考えてみると,攻撃を組み立て直すというタイミングで,どうも距離感を取り違えていたような印象を持ちます。チームがコンパクトさを失っていた,ということの裏返しでもあると思いますが,ビルドアップをやり直すためのパスが,実際の距離よりも短い距離感で繰り出されてしまった。相手にしてみれば,厳しくプレッシングを仕掛けずともこちらから勝手に崩れていっているわけだから,隙を見逃さない姿勢があれば,あとは自分たちが狙う形へと持ち込むだけ,と。


 相手のプレッシングによってリズムを崩された,あるいはパス・ワークによって守備ブロックを断ち割られて,というのではなくて,自分たちがクリアしておかなければならない課題,修正できていなければいけない課題をピッチで露呈することで,相手のゲーム・プランに自分たちから乗ってしまった。その結果として,ゲーム・クロックが45:00を示す段階で0−2というビハインドを背負う形になってしまった。
 攻撃面にウェイトを徹底してかけたリザーブ,そのリザーブによって反発力を発揮したのは確かだとは思いますが,そもそも不安定性を露呈するゲーム・マネージメントになってしまっている。守備面で言うなら,マンマークを徹底するのであればその意識を再び落とし込むべきでしょう。今節のような,中途半端な守備応対ではチームが守備ブロック方向からコンパクトさを失うことにもなります。攻撃面で言えば,後半の反発力はいいとして,やはりビハインドを背負わないとスイッチが,という形は回避すべきでしょう。先制点奪取で主導権を,という形に持ち込むために,どういうアプローチをチームとしてすべきなのか,しっかりと意識し直すことが求められるように感じます。