ちょっとだけ転換点かも、の鈴鹿8耐。

真正面から,欧州メーカが勝負を挑むシーズン。


 2011シーズンを表現するならば,このような表現ができるかも知れない,と思います。
 

 再び鈴鹿8耐について書いていこう,と思いますが,今回はちょっと視点を変えてみよう,と思います。鈴鹿8耐の正式名称を見ると,

 2011 QTEL FIM Endurance World Championship Series, Round 3 "Coca-Cola Zero"Suzuka 8hours World Endurance Championship Race

となっています。
 耐久レースの世界選手権,その第3戦,という位置付けです。
 鈴鹿8耐だけに注目すると,勝負権を持っているのは鈴鹿を熟知しているTSRであったりヨシムラなど,国内を拠点としているレース屋さんということになります。ですが,実際には耐久選手権を狙って鈴鹿にマシンを持ち込んでいるチームもあるのです。そんな視点でレース・リザルト(鈴鹿サーキット・オフィシャル)を眺めてみると,興味深いクレジットが見えてくる,と思います。


 ポディウム・フィニッシュ、だけではなくて,トップ10へと枠を広げて眺めてみると,欧州勢が存在感を示していることが見えてくるか,と思います。そんな欧州勢で最上位を奪ったのが,BMWフランスです。これはかなりの意味を持っているな,と思うのです。


 過去を振り返ってみれば,確かに欧州メーカも耐久選手権で勝負を挑んできてはいます。いますが,国産メーカと真正面から勝負を挑む,という感じではありませんでした。
 この耐久選手権はSBK規定のレーシング・バイクで戦われます。では,WSBKにマシンを持ち込んでいた欧州メーカがそのまま耐久選手権でも強さを表現できたか。実際には,勝負権を持っていた,とは言いがたいのです。たとえば,ドゥカティWSBKで相当な存在感を見せ付けていました。国産のインライン勢に対して,Vツイン(彼らの表現に従えば,Lツイン)の優位性を「速さ」に結び付けていたのですが,耐久レースに求められる「強さ」があったか,となると疑問が残ったのも確かなのです。
 国産メーカと同じ条件で,真っ向勝負を挑んでくる,という意味ではやはり,BMWを待つことになるのです。ボクサー・エンジンが代名詞であるBMWが,インライン4にツインスパーというパッケージでWSBK,そして耐久選手権の舞台へとマシンを持ち込む。面白くなってきたな,と思ったわけです。


 そして今季は,BMWフランスが鈴鹿へとマシンを持ち込み,4位というポジションを奪ってみせた。最終成績を見てみると,首位であるTSRとの差はベスト・タイムで約3秒,ラップ数で見ると5ラップ・ダウンと決勝段階ではしっかりと差を付けられてはいます。いますが,スターティング・グリッドについてのリリース(鈴鹿サーキット・オフィシャル)を見てみると,トップ10トライアル段階でのトップであるヨシムラ・スズキとのタイム差は1秒5に詰まっています。このタイム差をどのように評価するか,難しいところではありますが,少なくともBMWがこの鈴鹿である程度のポジションを奪えるだけのポテンシャルを持っていた,という証明にはなるかな,と感じます。


 さらには,10位のポジションに入っているのは,プライベティアのドゥカティです。「速さ」という部分で存在感を持っているとしても,なかなか「強さ」にそのイメージが結び付かなかったドゥカティを,しっかりとトップ10フィニッシュへと導いてみせた。ドゥカティ・サイドとしても,この結果はいろいろな意味を持っているのではないかな,と個人的には思うところです。


 国産勢が勝負権を持ち,主導権を掌握してきたレースですが,ひょっとすれば今季が転換点になるかも知れない。そんな印象を与えるような,興味深いリザルトであるように思うのです。