対甲府戦(11−06)。

ゲーム・プランを根底から覆しかねないような状況に陥ったけれど。


 実際には,ゲーム・プランを明確なものとする方向へと作用した。守備バランスを意識せざるを得ない状態ではあるけれど,守備面にだけ意識を振り向けてはいない。ボール奪取位置を押し上げながら逆襲を仕掛けるタイミングを狙う。実際に仕掛ける局面では,イニシャルで意識されるトライアングルを柔軟に変化させてフィニッシュへと持ち込む。


 さて。いつも通りに,の甲府戦であります。


 今節はパッケージの話,と言うよりは戦い方が重要な鍵を握ったものと見ています。


 今回は,敢えて相手側の視点で考えるところからはじめてみます。


 相手指揮官は,4−4ブロックを構築して組織的な守備応対を仕掛ける,というアプローチを得意としています。それだけに,ポゼッションからどのタイミングでリズムを変化させ,相手守備ブロックに隙を作り出すか,という浦和にとってはなかなかクリアできていない課題をそのまま持ち込んでしまうのではないか,と見ていたのも確かです。
 ただ実際には,相手はゾーン・ディフェンスを基盤とする守備応対というよりは,マンマーク・ディフェンス的な守備応対を意識して試合に入ってきたような印象です。前半は守備的にゲームを進め,後半になると戦術交代によって攻撃を加速させる,という中野田での浦和を意識して,むしろ前半段階で仕掛けていこう,という姿勢があったのかも知れません。そんなプランに乗りかけてしまったのが,セント・オフ直前の局面です。クイック・リスタートを意識していなかったのか,相手のリスタートに対する反応がチーム全体として遅れてしまう。そのために,相手の飛び出しに対して反応できる選手がゴーリーだけ,という状態に陥ってしまう。“プロフェッショナル・ファウル”であるとしても,いささか大きすぎる犠牲なのですが,このセント・オフが結果として試合の鍵となったように思うのです。


 浦和のゲーム・プランがより明確になってしまったことで,自分たちから「仕掛ける」必要性が出てきた,ようにアウトサイドとしては感じるのです。浦和にポゼッションさせて逆襲のチャンスを狙う,のではなくて,自分たちから仕掛けていく形を取らざるを得なくなった,と。
 ここで視点を浦和に戻せば,このショートハンドをきっかけにゲーム・プランは必然的に明確になった,とも言えるわけです。守備的な安定性を維持しながら,シンプルに逆襲を仕掛けるチャンスを狙う,と。しかしながら,守備的な安定性をしっかりと確保しながら先制点奪取のチャンスをうかがう,という形とは距離があった,と感じるところです。何とかスコアレスの状態でハーフタイムを迎えた,というのがフェアではないか,と。ただ,このスコアレス,というのが今節におけるもうひとつの鍵ではないか,とも感じるところです。


 浦和に主導権を持って行かれる前に仕掛けていかないといけない,という意識に傾きすぎたのか,守備応対面で隙を生じる局面が増えてきている。その隙を,浦和の攻撃ユニットが見逃すことがなかった。ゾーンを組織的に守備応対する,と言うよりはマンマーク的な守備応対をしていたはずなのに,SBである平川選手の攻撃参加をケアできていない。そのために,平川選手がスペースを狙ったフリーランを仕掛けることができている。スペースに対してフリーランを仕掛ける,という姿勢はなかなか見られなかった形ですが,今節はそのフリーランが先制点奪取に直結する要素となった。
 この先制点奪取によって,相手守備ブロックの守備応対はどこかでバランスを欠いた状態になっていったように感じます。マンマーク的,であるとすれば,タイトさが表現されない時間帯が増えてきていた。浦和の守備面では,ラインがどうしても自陣に近い位置にまで下がってしまって,窮屈な状態で守備応対を,という時間帯が潰し切れていなかったのも確かですが,相手の攻撃を跳ね返したあとの対応,という側面で見ると,後半は攻撃を繰り出せる局面が増えていた,というのも確かであるように感じます。試合を決定付けるのは,ミドルレンジからのコントロールされた,柏木選手のシュート(どちらかと言えば,テニス的な“パッシング・ショット”と表現したいところですが。)ですが,後半はショートハンドであることを感じさせない時間帯が多かったように思います。


 さてさて。厳しい状態から「勝ち点3」奪取に成功したわけでありますが,ここからが大事,であります。劣勢を跳ね返すことに成功した,この大きな足掛かりをさらなる足掛かり(勝ち点3)へと結び付けてはじめて,リーグ戦での反転攻勢への流れが見えてくるように思うのです。