アウェイな戦い方。

ホームな戦い方と,アウェイな戦い方。


 Jを基準に考えると,それほど大きな違いはない,と結論付けていいのではないでしょうか。ホームなのだから攻撃的に,という姿勢が強まるというのは自然なこととして,ではアウェイでは慎重な戦い方を選ぶ,というクラブがどれほどあるのだろうか,と。どちらかと言えば,ホーム・ゲームとそれほど変わらない戦い方を選ぶことで,アウェイであっても「勝ち点3奪取」へ意識を傾けるクラブが多いのではないかな,と思うわけです。


 そんなリーグ戦にあって,「アウェイ仕様」の戦い方を選択する監督がいるとすれば。


 少なからぬ違和感を感じるのではないでしょうか。


 勝負に対する姿勢が淡泊なのではないか,であったり,対戦相手に対する敬意は重要な要素であるのは当然としても,敬意を払い過ぎている(対戦相手を,必要以上に大きく見てしまっている)のではないか,というように。「勝ち点3」を奪取することで,スタンディング上位へとチャレンジしていくための重要な足掛かりをつかむ,そんなタイミングが前節でした。セーフティに,と言うよりは「勝ち点3」を意識した戦い方を,少なくともアウトサイドは意識する。でも,実際にはアウェイ・マッチで慎重な戦い方に終始してしまったように映るから,どうしても違和感が拭えない。


 見覚えのある話,と言いますか,聞き覚えがある話です。


 フクアリダッグアウトを仕事場にしていた,アレックス・ミラーさんであります。彼も,アウェイな戦い方を明確に持っていたような記憶があります。アウェイ・マッチで「勝ち点3」を狙う,と言うよりは「勝ち点0」という事態を回避すること,そのために守備的な安定性を強く意識し,勝ち点1を確保することを狙った戦い方を選択する,というような。
 トップ・ディビジョン残留が最優先項目となっていた時期を思えば,Jを基準に置こうと欧州を基準に置こうと,決して不思議な選択肢ではありません。ありませんが,どうもアレックスさんは残留を最優先項目としていた時期だから,アウェイな戦い方を選んでいたわけでもないようです。どうも,Jを欧州的なリーグ戦として考えていた,その結果としてのアウェイな戦い方ではなかったか,と。


 前節の戦い方を念頭に置けば,どうも現任指揮官のロジック・フローには「アウェイな戦い方」,Jを基準とするアウェイな戦い方ではなくて,欧州的な戦い方が組み込まれているのではないかな,と。


 Jが「階層分化型」のリーグ戦で,クラブごとの最優先項目がある意味明確であれば,セーフティなアウェイ仕様も,それほど不思議な印象を与えないのではないかな,と思います。たとえば,トップ・フライトに成功したクラブであれば,最優先事項はトップ・ディビジョン残留に置かれるはずです。そのために,どれだけの勝ち点が要求されるのか,その勝ち点をどのようにして確保していくか。そんなロジック・フローが基盤に置かれているならば,「アウェイな戦い方」が持ち込まれるのはごく自然なこと,のはずです。
 しかし,Jはここまで明確に「最優先事項」が見えているクラブはなかなかありません。裏を返せば,シャーレへの勝負権を引き寄せ得るクラブが絞り込まれてはいない,とも言えるわけです。そんな,勝負権を持ち得るクラブが多いリーグ戦で,アウェイな戦い方は意識しづらいかも知れません。むしろ,ホーム・アンド・アウェイで戦われるカップ戦(アウェイ・ゴールが鍵を握ることのある,ナビスコカップ型のカップ戦ですね。)を繰り返すような,そんなリーグ戦の戦い方であると理解する方が分かりやすいかも知れません。だとすれば,アウェイの戦い方がセーフティなだけだと,違和感を感じることになるのではないか。


 前節の戦い方が,現状を冷静に判断した結果,シャーレではなくて,残留が置くべき具体的目標であって,その目標達成のために導かれたものだとすれば,単純に否定されるべきものでもないか,と思います。アレックスさんが,残留を最優先項目としていたジェフに持ち込んだ,あの戦い方だと理解すれば,です。


 アウェイな戦い方そのものが,悪いわけでは決してありません。ありませんが,ホーム・アンド・アウェイカップ戦のように戦っていかないと,Jでスタンディングを上げていくのが難しいのも,また確かであるように思うのです。このズレ,些細なものであるようにも思いますが,意外にリーグ戦を戦っていくにあたって重要な要素になるように感じられます。