対山形戦(11−03A)。

たとえば,予想していなかった化学反応があったとして。


 その結果を「なかったもの」とすることも,当然に選択肢でありましょう。意図する方向へと反応が進んでいなかったわけですから,「失敗」と評価したとしても不思議はありません。


 しかしながら。


 「結果として」ポジティブな化学反応であったとしたら,「失敗」という評価が妥当性を持つものなのか。「望外」という言葉に置き換えられる,そんな予想外も当然にあり得る,と思うのです。そのときに,「原理原則」だけに固執してこの化学反応を否定するのではなく,どんな偶然がこの結果を導いたのか,事後検証によってある程度の法則性を導くことができるか,と。


 そんな過程が,あったのだろうか。


 アウェイな山形戦であります。


 試合そのもの,について書くことも大事かな,と思いますが,今節に関しては“オフ・ザ・ピッチ”な要素がさらに重要ではないか,と思います。そんな視点で書いていくことにします。


 欧州的なリーグ戦であれば,「勝ち点1」が示す意味は違う,かも知れません。アウェイな戦い方を徹底することにも意味がある,かも知れません。知れないけれど,スタンディングを冷静に眺めれば,このゲームでの「勝ち点3」は「勝ち点3」以上の意味を持つものになる,と言えるはずです。スタンディング下位との距離を詰められ,心理的に追い詰められてしまうのか,それとも浮上に向けた足掛かりをつかむのか。「勝ち点6」に相当する意味を持つゲーム,と言うにはあまりに位置が低すぎるのは確かですが,でも重要なゲームであることに違いはない。


 そんなゲームに,現任指揮官が意識する「自分たちのフットボール」だけを持ち込み,このフットボールだけが「勝ち点3」への道筋だ,と思っていたように映る。前節の化学反応が,まったくと言っていいほどに今節へと反映されていないように感じられるのです。


 前節から今節の試合間隔を考えれば,土曜日から水曜日,の“イングリッシュ・ウィーク”であります。トレーニング・スケジュールを組むにあたっても,戦術的な微調整などに多くの時間を割く,と言うよりは,むしろチームのコンディションを整えるための時間をより多く割く必要がある,とは思います。が,前節の結果を受けて,今節の戦い方にフィードバックさせるべき要素がないのか,という視点が落ちていい,とまでは思わない。


 守備的な安定性を意識してストリクト・マンマークに近い守備応対,ポジション・フットボール的なフットボールを,というアプローチにも確かに意味はあります。あると思うのですが,「ギアチェンジ」がポジション・フットボールのままではなかなか機能しない。攻撃ユニットに「突き抜けた個」を置いていて,その個が持っているパフォーマンスを引き出すためにはどうしても,物理的なスペースが必要,というのであれば,ポジションをある程度固定することにも意味がある,かも知れません。かつて,ハンス・オフトが持ち込んだ方法論はこんなロジック・フローで説明できるようです。
 しかし。いまの浦和の戦力バランスを考えれば,かつてのような「突き抜けた個」を戦力としているわけではありません。ストロング・ポイントを持っている「個」,その個を連動させながら攻撃を組み立てていかないと,なかなかギアチェンジ,攻撃リズムを引き上げるためのクラッチ・ワークが機能してくれない。前節,特に後半の戦術交代によってどんなギアチェンジが機能したのか,冷静に評価できているならば,ポジション・フットボール,という「意図する反応」とは違うとしても否定をすべきアプローチではないはずです。にもかかわらず,今節の戦い方を見ると,前節のようなギアチェンジを「意図して(戦術交代を通じて」仕掛けているようには見えなかった。


 前節での化学反応は,「柔軟性」によって導かれたもの,と今節を受けて評価したかったところですが,今節の戦い方から見る限り,「柔軟性」ではなくて単なる「戦術交代上の偶然」が作用していただけ,のようですし,その偶然から何らかの意味を読み取る,そんな戦術的な柔軟性がチーム・ビルディングにあたって機能していない,と言わざるを得ないように感じます。