“Alleggerita”なM3。

ちょっとばかり,アルファロメオな表現方法を持ち出してみました。


 「軽量化」という意味の単語であります。確か,アルファが“アレジェリータ”を最初にリリースするのはジュリア・スプリントの時代であります。ボディにアルミニウムを使って軽量化を施すと同時に,車両規則を読み込んで交換不可能な部品について,あらかじめレーシングな環境を意識した部品へと換装する,と。グループAマシンのベースとなる,ホモロゲーション・モデルを設計するときの手法と同じことを,1960年代のアルファはすでにしていた,というわけなのですが,現代にあって,アルファが“Alleggerita”にレーシングな意味を乗せているか,というとそんなことはありません。ワンランク上のスポーツ・モデルです,という意味合いを持たせている,と言うべきであって,このBMWもそんな文脈で読んでいいのではないか,と思います。


 さて。今回は再びフットボールを離れまして,こちらのニュース記事をもとにしつつ,BMW・M3に追加される限定モデル“CRT”について書いていこう,と思います。



 ごく大ざっぱにCRTを説明するならば,軽量化を意識すると同時に,エンジンとブレーキの再調律によって運動性能を基準車から引き上げた,特別仕様のM3であります。軽量化となると,徹底したストリップ・ダウンをイメージしてしまうところですが,CRTは装備を簡素化することで軽量化を,というアプローチを選択していないようです。この記事をまとめた曽宮さんによれば,BMWは素材変更によって軽量化を狙っている,とのことです。具体的には,エンジン・フードなどの大きな部品にハニカム構造のCFRPを採用したり,遮音材やエグゾーストなどを軽量な素材のものへと変更することで,(恐らくは,オリジナルのM3と比較して,でありましょうが)70kgの軽量化を達成している,とのことであります。
 軽量化を徹底して意識しているモデルですから,重量配分面を意識して,でもありましょうが,このM3に搭載されているエンジンはV型8気筒であります。この記事にはエンジン・ルームのオフィシャル・フォト(でありましょう)も掲載されているのですが,その搭載位置はかなりバルクヘッドに寄っていますし,オーバーハング部分を見てみるとそれほどの重量物が収められているようには見受けられません。心情的にはBMWがこだわりを持つストレート6を,と思うところもありますが,このレイアウトを見るとセダン・ボディであっても運動性能面に妥協はしない,という姿勢を見ることができるようにも思います。


 さてさて。このCRT,シリアル・ナンバーは067までしか用意されていない,とのことであります。であれば,当然掲げられるプライス・タグには相当なお値段が掲示されていても当然でありましょう。つねにおサイフが軽いワタシとしては,新車での縁などほぼ皆無なクルマでありますが,セグメントD(ちょっと大きめのセグメントDですから,正確にはDプラス,と言うべきかも知れませんが。)のスポーツ・セダンとしてBMWはひとつの解だろう,と思っています。