Perception, Decision and Execution.

状況把握,のために何が必要なのか。


 そこまでを含めて,“Game Intelligence”という表現でもいいのかな,と思ったりします。


 さて。今回はフットボールな話に戻りまして,鈴木さんが寄稿されたコラム(スポーツナビ)をもとに,ちょっと短めに書いていこう,と思います。


 鈴木さんが取材しているのは,バルセロナの下部組織に長く関わってこられたジョアン・ビラさんであります。そのジョアンさんが,フットボールにとって大切な要素であるとして指摘した要素が,「状況把握(Perception)」,「決断(Decision)」に「実行(Execution)」という要素なのです。このコラムを読んでいて思い浮かんだのは,フットボールと言ってもラグビー・ユニオン方面のフットボールでありまして,こんなエントリを書いたこともあるな,と思いだしたのです。


 つまり。浦和高校ラグビー部のアプローチではないか,と思ったのですね。


 ジョアンさんは,特別なことを指摘しているわけではない。むしろ,ごく当然の要素を指摘しているに過ぎないな,と思うのです。テクニカル・スキルが重要であることは当然としても,フットボールはあくまでもチームで戦う競技です。チームが最大限に機能するために,ひとりひとりのテクニカル・スキルが組み合わされていく必要がありますし,どのようなスキルが求められるのか,局面によって適切な判断が求められていくことにもなります。そのためには,いま置かれている状況がどのようなものなのか,的確に把握できていなければなりませんし,そのためには「広い視界」を確保できていなければいけない。そして,「平面」な視界から「俯瞰的な」視界へと変換できる能力が伴っていなければいけない。このことを考えてみると,フットボールという競技,アソシエーションとラグビーの区別なく,ごく当然の要素だな,と思うのです。


 ではあるのですが,思うよりも「当然」ではないのかも知れないな,と思ったりもするのです。


 育成年代にあっても,「結果」を導くことは重要である,と。そのために,最短距離なチーム・ビルディングを選択する,という方法論も確かに理解できるところです。フットボールについては,今季から本格的なリーグ戦(東日本,西日本というエリア別ではありますが)が導入されて,チームごとの個性がより明確なものとなっていくことが期待されますが,学校スポーツを念頭に置くとまだまだ,「カップ戦(トーナメント戦)」が最優先事項であって,このカップ戦で負けないことが求められていくことになります。どんな指導者だって,チームをひとつでも高い位置へ,そして頂点へと導きたいと思うし,そのためのアプローチを,と思うのは当然だろう,と思うのです。すると,どうしても局面ベースで「考える」チーム・ビルディングよりも,戦術的な枠組み,約束事を優先させるチーム・ビルディングへと傾きがちになる,かも知れません。結果から逆算してチーム・ビルディングができる,という部分において,なるほど,と思うところは確かにあります。そのためにゲーム・インテリジェンスを強く意識しないで,育成年代を経過してしまう可能性も,決してゼロではない,と。理解できる部分もあるけれど,その理解できる部分がゆえに,デメリットを生じているかも知れない,と思うのです。


 それでも,浦和高ラグビー部のように,「考える」チーム・ビルディングで近鉄花園への距離を詰めてきているチームもあるわけです。リーグ戦へと軸足を大きく移しつつあるフットボールであればなおさらに,「考える」ことが強く求められていくことになりましょう。ジョアンさんの指摘が,ごく当然のものとして受け止められる時期も決して遠い話ではないはずだ,と期待しています。