空を見上げて(キャプテンのこと)。

まだ,僕の住所がW2,なんて郵便番号だった時のこと。


 僕が活動していたのは,リヴァプール・ストリートからほど近くのエリアだったのですが,その日はどうしても,リヴァプール・ストリート方向に足を向けることができませんでした。どういうわけか,不思議と「空」を眺めていたかったのです。確信犯的に違うチューブに乗って,DLRへと乗り換えてグリニッジへ。


 ロンドンは大都市でありながら,意外にも空が大きく感じられる街です。当時住んでいたフラットから,まっすぐに歩いていけばハイド・パークへと突き当たります。公園内のベンチに座って空を眺めれば,思うよりも狭いロンドン,その狭さを感じさせない広さを実感できます。また,ノッティン・ヒル方向へと歩いていくと,映画にも映し出された高級住宅街があって,その屋根越しの空も意外と広いのです。そんな,ロンドンの空が僕は大好きなのですが,その日は飽きるまで空を眺めても眺め足りない,というような心理状態だったのです。


 友人からのメール,予想外なメールを受け取ったから,です。


 まさか,同じような心理状態になるとは,思っていませんでした。それだけ,予想外なことだったのだ,と思います。


 キャプテンのブログ,個人的には楽しみなものでした。それほど頻繁にアクセスするというほどではなかったのですが,取材日記的にアップされた記事などを読んでいると,(ちょっとだけ行ったところが重なっていたりするとなおさらに)あんな道であんなことしてるんだ,なんて羨ましかったり,いつか行ってみたいものだな,なんて想像をふくらませてみたりして。
 でも,いつもと違うエントリが上がっている。違和感を感じながら読み進んでみると,あまりに予想外なことが書かれている。何かが抜け落ちたような,そんな感覚でした。


 ライダース・クラブ誌の編集長,竹田津さんの訃報を知らせるものだったのです。


 結構古くからライクラを読んでいて,しかもほぼ同世代としては,キャプテンのセンスにはうならされるところが多かったですね。たとえばキャプテンのヘルメット,あのモティーフとなっているのは1980年代のアメリカン・レーシング(AMAスーパーバイク)なのですね。個人的にも,自分だけのグラフィックをオーダするのであれば,あの時代のヘルメット・グラフィックをモティーフにオーダしたい,と思っているだけに,やはり影響を受ける年代というのが同じなのだな,と思っていました。


 そして,バイクのカスタム・センスであります。ライクラの最新号には,キャプテンがカスタムしたXRが掲載されています。個人的な感想を包み隠さず書けば,「こうきましたか!」ですね。アメリカンであることには間違いありません。古き良き時代のダート・トラッカー的な雰囲気をさらに強く持っていますし。反面で,不思議とイタリアンな雰囲気をまとっているようにも感じられます。やはり,ドゥカティのカスタムが効いているのだな,と。


 こういう素敵なバイクを置いて,空に駆け上がるとは早過ぎるでしょう,と。


 もっともっと,バイク好きのカスタムを見せてほしかったですね(散財を唆すようですけども)。そして,キャプテンの趣味嗜好がどう変わるのか,同世代としてすごく興味があったですね。ボスの年代に近付くにつれて,ボスみたいにビンテージへと趣味嗜好が動いていくのか,それとも最新鋭を追っていくのか。キャプテンのことだから,さらに守備範囲が広がっていく,という感じだったのでしょうけども。


 そんなことを,時に空を見上げながら想像してみたりします。