対広島戦(11−15A)。

ストリクト・マンマークと,ポジション循環と。


 そう簡単に両立できる要素ではありません。となれば,現任指揮官はすこぶる「欧州的に」この試合を意識していたのではないか,と推理できます。勝ち点3を奪いに行って勝ち点0,というケースを回避し,「勝ち点1」を何としても確保して浦和に戻る,と。


 アウェイ・マッチな広島戦であります。いつも通りの1日遅れ,でありますが,限定的な印象にとどまっておりますので,今回はちょっと短めに。


 今季の浦和は,“ポジション・フットボール”である,と。そのポジション・フットボールにストリクト・マンマークを組み合わせるような形でありますから,何とも「古典的な」フットボールを持ち出してきたな,と感じるところは確かにあります。セントラル・ミッドフィールドのみならず,アタッキング・ミッドフィールドにポジションを構える選手にも,マークを付けていたわけですから。加えて,攻撃面と守備応対面でチームが機能分担をしていた,となれば,いつかどこかで,なフットボールだったようにも思うのですが,反面で戦術的な狙いは明確だった,とも思うのです。


 要は,相手のストロング・ポイントを抑え込むこと(=守備応対面の安定性)を優先する,と。


 フットボールは「自分だけ」で完結できる競技ではありませんから,相手がどのように攻撃を組み立て,あるいは守備面を整備しているのか,的確に分析することが求められますし,その分析結果をもとに自分たちのフットボールを微調整していくことが求められます。今季の浦和を振り返ってみると,相手に自分たちのフットボールを「分析させる」材料はかなり事前に提供してしまっている反面で,相手のフットボールをどれだけ観察,分析してきたのか,ピッチから感じ取れる部分は多くなかった,と言わざるを得ません。加えて書けば,まだ,「自分たちのフットボール」という型をなかなか感じられない。基盤がしっかりとあって,その基盤を微調整する,という過程を機能させようにも,前提が揺らいでしまっている,と言うべきか,と思います。
 そんな状態を考えるならば,相手のフットボールから逆算するアプローチ,という方法論も(いささかリアクティブではあるのですが)あり得る話ですし,今節にあっては一定程度機能した,と見ることもできるはずです。


 どんな形であっても,「勝ち点3」奪取によって手掛かりをつかまなくてはならない状態なのは確かですが,チームが「戦い方」でいまだ明確なイメージを共有できていない,「戻るべき場所」を構築できていない段階で,スタンディング上位と真っ向勝負を挑み,勝ち点をまったく獲得できない状態に陥るリスクもまた,何としても回避しなければならない。そんな前提があっての戦い方だった,と見ているのです。


 ただ,「勝ち点3」奪取が最優先課題なのは変わっていませんし,次節やその次の試合の重要性が増した,とも言えるはずです。そして,冒頭に書いた「ポジション循環」という要素です。相手守備ブロックを突き崩すためのアプローチは,「個」を背景にする仕掛けだけではないはずだし,コンビネーションによる崩しも繰り出せなければ,相手を突き崩す,という部分が存分に表現できません。コンビネーション,というアクセントを加えないと,恐らく浦和的なポジション・フットボールは成立していかないかも,とも思っています。


 今節での戦い方は,あくまでも相手を意識したもの。自分たちのフットボール,という出発点を考えれば,まだまだやるべきことはある。厳しい日程ではありますが,明確な基盤を感じられる戦い方を,と思いますし,「勝ち点3」にこだわる姿勢を,と思います。