LE MANS 2011(LMP2版)。

なかなかいい仕事をしたのではないでしょうか。


 とは言え,高島町が,ではありませんがね。


 さて。きっちりと積み残してしまったLMP2クラスの話を,こちらのリリース(NISSAN MOTORSPORTS)をもとに書いていこう,と思います。


 まずは,クラス優勝を飾ったグリーブス・モータースポーツであります。


 キーワードは恐らく,プジョー・スポールと同じように「安定感」ではないかな,と感じます。ベストタイムだけで見てみると,クラス2位に入ったシグナテックの後塵を拝しています。シグナテックにしてもグリーブスにしても,搭載しているエンジンは同じなのですから,マシン・セッティングなどのディテールでタイム差が生じている,と見るべきか,と思うのですが,シグナテックとのギャップを見ると「なんと!」6周差,であります。しかも,ピットストップ回数もシグナテックと比較して,1回少なく抑え込めています。グリーブスがしっかりとしたレース・マネージメントを24時間継続できたこと,ドライヴァも100%には踏み込まない,ということを意識しながらマシンをフィニッシュ・ラインへ持ってきたのだろう,と。耐久レースを戦うにあたって,「正攻法」なアプローチを徹底できていた,という部分でこれはホメるべきではないか,と思うわけです。


 で,グリーブスはどのシャシーを使っているか,と見るとザイテック・モータースポーツが手掛けたLMP2シャシーでありまして。


 このザイテックが,LMP2で日産の存在感を強めるにあたっての,ひとつの鍵ではないかな,と思うのです。こちらのリリース(Zytek Motorsport・英語)にもあるように,彼らがVK45のデリバリー,メインテナンスを担当しているのです。そして同時に,彼らはレイナードの流れを汲む,シャシーコンストラクターでもあります。LMP2マシンを手掛けるシャシーコンストラクターは,比較的早い段階からVK45の可能性を見抜いていたようで,どのような形で欧州へのデリバリーが開始されるのか,公式な発表がない段階から搭載可能エンジンとしてVK45,というクレジットを表記するケースが多かったのです。ザイテックもそのひとつだったのでしょうし,ニスモ側からすれば,シャシーを手掛けていると同時にエンジンのメインテナンスも手掛けられる,というザイテックに魅力を感じたのだろう,と推察します。そして,「いい仕事」への足掛かりができた,と。


 そしてもうひとつの鍵は,フランスのシャシーコンストラクターでありましょう。レース屋としても有名な,“オレカ”であります。彼らもVK45のパフォーマンスに注目していたようで,自分たちでセカンド・チームをLMP2クラスに送り込んでいる(=ファースト・チームはプジョー・スポールのサテライト的に位置付けられます。)のですが,そのパッケージも自分たちのシャシーにVK45,であります。ベストタイムで見るとVK搭載勢で最上位でして,「速さ」だけで考えるならば可能性を持っていたチーム,であります。そして,シグナテックもオレカのシャシーにVK45,と。


 それにしても,です。


 技術規則の変更によって戦う舞台を失ったレーシング・エンジンとは,欧州日産はいいところに目を付けたな,と思いますし,ニスモにしてもザイテックというパートナーを見つけることができた。そして供給を担当するザイテックは,実力のあるプライベティアにエンジンを供給できている。偶然も作用しているでしょうが,ある意味で理想的なメーカとレース屋との関係ではないか,と感じるところです。


 かつて,驚くほどのファクトリー体制で乗り込みながら結果的には失敗してきた,ポディウム中央という位置を,「側面支援」とは言え参戦初年度にして奪ってみせる。必ずしもファクトリーだけがレースの主役ではないし,プライベティアの戦いぶりにも魅力がある,と思っているモータースポーツ好きとしては,今季の結果はすごく好ましく映るのです。