やってみないと(対ペルー戦・KCS2011)。

やってみたから,現在位置が分かるわけですね。


 どういう部分に課題があるのか。その課題は短時間で潰せるのか,それとも難しいか。44:59から45:00になるタイミングで消えるゲーム・クロック,その表示が再び動き出すタイミングでパッケージを変えてきた,ということは指揮官がまだまだクリアすべき課題がある,という意識を持っていることの裏返しかな,とは思うのですが,それでも「やったから」どれほどの課題なのか,という「課題の実像」が実戦を通じて見えてきた,とも言えるわけです。


 代表戦無敗,というレコードも確かに重要なのですが,この「カップ戦」は強化試合という位置付けであるはずです。その位置付けを明確に示すように,交代枠が大幅に広げられてもいる。この試合でもったいないと思うのは,戦術的な交代として使いたかっただろう枠を,「負傷交代」に使わざるを得なかった場面が複数あること,ではないでしょうか。


 さて。まいどの通りに,のペルー戦であります。


 この試合では,やはり数字の話からはじめるべきかな,と思います。4から3へ,でありますね。


 欧州におけるフットボール・シーズンが終了してからそれほど時間を置かずに,この代表戦がセットされてしまっていた,というのが最初の障壁だったかな,と思います。ちょっとザックさんの思考を推理してみると,戦術的なオプションを広げておきたい,というのが出発点だろう,と感じます。そして,千田さんのブログでも引用されていますが,意外にサイドで攻撃を仕掛けていけるフットボーラーがいる,とザックさんは見ているようです。たとえば左サイドを取り出してみれば,長友選手しかり,今回ひさびさに呼ばれた安田選手しかり。彼らのパフォーマンスを引き出すためのパッケージとして,得意としてきた3は悪くないのではないか,と。ただ,4から3へ,というのであれば,もともと4を表現していたフットボーラーがどれだけ3を表現できるか,という見方をしたかったのではないかな,とも思うわけです。であるならば,本田選手と長友選手の合流時期は分かっていたこととは言いながら,いささか計算が狂う,その要因にはなったかと感じます。


 もうひとつ。「縦」の関係性を整理しきれなかったかな,というのが3の課題でしょうか。


 この縦の関係性,ポジショニング,という意味での関係性も当然指摘できるでしょう。SBとしてイメージしてきた攻撃ユニットとの距離感と,アウトサイドとしてイメージすべき攻撃ユニットとの距離感と。この距離感が,守備応対面での5バック,その大きな要因になったようにも感じますし,サイドからの攻撃がいささかしっくりいかなかった,そのファクタかな,と思うわけです。
 もうひとつは,中盤とトップ,という意味での関係性です。この試合のコメンタリーを担当していた名波さんも指摘していましたが,ザックさんの3はゲーム・メイカーを置かない形です。つまり,「誰かに」攻撃の構築を委ねるのではなくて,「誰もが」局面に応じて攻撃を組み立てる「軸」にならないといけない。そして,「速さ」をザックさんは首尾一貫して求めてきているわけですから,長谷部選手がコメントしているように思考スピードが上がっていかないと,結果としてボールを動かす,スペースへのフリーランを仕掛けるスピードも上がっていかない。オートマティズム,などという言葉がありますが,その水準が3と4では比較にならなかった,ということではないでしょうか。


 「本格的な実戦」(=ワールドカップ予選でありますね。)を意識してこの戦術オプションを,と考えたのであれば,いささかリード・タイムが少ないな,と感じますし,チームに高い負荷を掛けられる実戦もあまりに少ないわけです。キリンカップで2ゲーム,そしてキリン・チャレンジカップで1ゲーム。それだけに,ザックさんがどうこの「カップ戦」を位置付けるか,そして横浜でのゲームまでのインターバルで,どれだけ3についての課題を潰していけるのか,が興味深いな,と思います。