"Big Ear" Goes to Barcelona.

思えば,オールド・ウェンブリーで同じカップを掲げているのですよね。


 その後のフットボール・スタイルに大きな,あまりにも大きな影響を与えることになるフットボール・コーチがファースト・チームを預かっているときに“ビッグイヤー”を奪取するわけです。そして,バルサ・スタイルを貫く形で今季も,と。


 さて。欧州カップ戦(決勝戦)であります。いろいろなところで,“SUPER”なバルサについて触れられておりますので,ゲームそのもの,というよりも,思うところをちょっと書いてみよう,と思います。


 やはり印象的なのは,バルサが「自分たちのフットボール」を徹底してきたこと,でしょうか。


 もちろん,今季に限定した話ではないのですが,自分たちのフットボールで相手を打ち破る,というアプローチにこだわり抜く。フットボール・スタイルに対して,徹底的にこだわるというのは,確かにダッチ・スタイルの雰囲気を濃厚に感じさせるところです。ではありますが,“ポジション・フットボール”として位置付けられるダッチ・スタイルではありません。リヌス・ミケルスを源流とする,トータル・フットボールの香りを強くするものです。


 そんなバルサに対して,「処方箋」を提示する指揮官がいた。ジョゼであります。


 現実主義的なフットボールをチームに落とし込む。個人的な嗜好を言ってしまえば,ちょっと違う方向軸にあるフットボールかな,と思うけれど,反面で緻密に組み上げられたフットボール,との印象を受けるのも確かだし,プロフェッショナルであるからには「結果」を引き出すためのアプローチを選択するのが当然,という「潔さ」のようなものも感じる。そんなアプローチでバルサに対峙した。


 では,ユナイテッド(つまりはマネージャーであるサー・アレックス)がウェンブリーで描こうとしたアイディアは,と思うと,ジョゼ的なリアリズムも意識しつつ,同時に自分たちの攻撃力を,という「微調整型(いつものユナイテッドと比較して,調整幅は大きかったかも知れませんが。)」だったかな,と感じます。で,今季のバルサは「微調整」をスッと跳び越えていったわけです。


 リアリズムに対して,リアリズムで対抗するのではなくて,リアリズムを凌駕できるだけのパフォーマンスを備えることで対抗しようとする。書いてしまうと簡単なものですが,なかなかできるものではありません。「結果」を要求されるプロフェッショナルならば,なおさらのことです。それでも,彼らは自分たちのフットボールへの信頼を揺るがせることはなかったわけですし,自分たちのフットボールで頂点に立つ,というアプローチを選んだ。そして,高みを陥れてみせた。


 欧州メディアの,バルサへの評価は最上級,あるいはそれ以上だとか。そんなバルサに対して,どのクラブがどのような対抗策を打ち出し,欧州カップ戦の舞台へと戻ってくるのか。いささか気の早すぎる話ではあるのですが,そういう部分も楽しみになるほど,いまのバルサは“SUPER”だな,と,(イングランドびいきとしては甚だ不本意ではあるのですが)思わざるを得ないのであります。