対鹿島戦(11−12)。

積み残された課題が多い「勝ち点1」だな,と思います。


 当然,結果から見た評価は異なるものです。「勝ち点0」を意識せざるを得ない状態から,相手が確保しかけていた「勝ち点3」,その勝ち点3を減算させたのだから評価すべき部分は当然ながらにある。ひとつの方向性を,あのフットボールが見せた,という解釈もあり得るでしょう。けれど,11スペックな浦和,その基盤に関わる部分であまりに未成熟な印象を残している,というのも確かです。そもそも11スペックな浦和,というイメージが明確にファースト・チームで共有されているのだろうか。


 「勝ち点1」という手掛かりよりも,「勝ち点3」を奪われかけた,その背景にある要素をひとつひとつクリアしていかないと,「勝ち点0」という結果に再び戻ることにもなりかねない。


 いつものように1日遅れ,でありますが鹿島戦であります。


 さて。守備応対面で気になるのは,“アタック&カバー”の関係性が見えてこないこと,です。


 たとえば,CBの役割分担が明確になっているのか,今季のフットボールからはなかなか感じ取れない。相手ボール・ホルダーに対して仕掛けていくべきCBが誰で,そのアタックに対してカバーに入る(ボール・コントロールを取り戻す)べきCBは誰なのか。今季のフットボールでは,CBそれぞれが「カバー」型で,ボール・ホルダーへ仕掛けていくようなディフェンスを繰り返す,という局面が少ない。それならば,セントラル・ミッドフィールドを含めた“守備ブロック”としてアタック&カバーの関係性を構築しているか,と考えてみても,そのような関係性がピッチから感じ取れるような局面は皆無に近い。実際にピッチから受け取れるのは,ストリクト・マンマークのようで,実際にはストリクト・マンマークとも言いがたい,何とも中途半端な守備応対だったりする。


 どういうユニットでボール・コントロールを奪いに行くのか,どのエリアでボール・コントロールを奪うための網を張るのか。


 ごく基本的な部分で,戦術的なイメージがひとつの方向性へと束ねきれていない,と思うのです。


 MDPに掲載されていた広瀬さんのコメントを読む限り,決してボール奪取位置を低めに設定しているわけではない,と。であれば,守備ブロックにまで追い込む形でボール・コントロールを奪い返すような守備応対イメージではなく,できるだけ高いエリアで相手ボール・ホルダーを追い込んでいくようなファースト・ディフェンスが求められることになる。つまり,アタックを仕掛けるべきフットボーラーは守備ブロックに近い位置,ではなくて,もうちょっと高めにいなければならないはずです。また,守備応対での距離感を意識するならば,もうちょっと前後の距離が縮まっていなければならない。そして,チェイシングの仕掛け方が,チームとしての守備応対が機能するか,それともしないのか,を左右することにもなるはずです。
 攻守の切り替えを素早く,というイメージがあるのだとすれば,相手ボール・ホルダーに対して最も近い位置にいるフットボーラーが徹底してチェイスを仕掛けること,そしてチェイスと連動する形でボールを奪うための数的優位を構築する,と。そんな戦術イメージだとするならば,浸透していないと言うべきでもあるし,そもそも浸透させようとしているのかも,アウトサイドから見る限りは判断が難しい。いい攻撃を仕掛けるための守備応対,という意味から言っても,今季の戦術基盤は(少なくとも現段階において)かなり脆弱である,と言わざるを得ないように思います。


 そして,攻撃面では「センター」を生かし切れていない,という印象が付きまといます。


 今季のフットボールでは,ステーションとなるトップとの距離感が広めに意識されています。ウィンガーが仕掛けていくためのスペースを,というアイディアが背景にあるものと感じますが,ステーションにボールが預けられる,という局面を考えると,このネガティブが出てきます。ステーションへのボールの収まりが悪ければ,ステーションが「溜める」時間を稼げないと,ステーションへとボールを預けるタイミングが,そのまま相手守備ブロックにとってみればボール・コントロールを奪い返すタイミングになることを意味しかねません。のみならず,局面によってはトップがパスの落下点に入るためにセンターのポジションから外れることもあり得ます。そのときに,誰がトップのポジション,スペースを埋めていくか。ポジショニング・バランスが中途半端に硬直してしまっているために「距離感」が悪く,結果としてその距離を何とかして埋めようと厳しいパスを繰り出さざるを得ない状態へと嵌り込んでいく。1トップが不調から抜け出せていない,という部分も作用しているとは思いますが,相手の「縦」を突くようなパスを繰り出せる局面があまりに少ないことから見れば,誰が,ではなくて攻撃ユニットのバランスが悪い,というのもまた確かだろう,と思うのです。前半,不用意にボール・コントロールを失って,相手が刻むリズムへと自分たちから嵌り込んでいった印象がありますが,攻撃面でもまだまだ修正すべき課題が山積している,と言うべきだろうと感じます。


 では,2トップ(4−4−2フラットと,4−4−2ウィングの中間のようなイメージでしょうか。)への変更が大きな鍵だったか,と見ると。確かに,鍵のひとつではあったか,と思いますが,チームが「縦」をシンプルに意識するようになったこと,セントラル・ミッドフィールドが,守備面だけに意識を振り向ける形から(もうちょっと積極的に攻撃参加を仕掛けていいと思うのですが,どうも戦術的な制約がありそうな。)ボールをシンプルに動かせるようになったことで,ボールを縦に動かしやすくなった,という部分もまた,「勝ち点1」の鍵として作用したように感じられます。ビルドアップから相手を崩す,という方向性だけに意識が傾いていたところを,「裏」を素早く狙いに行く,という意識がピッチに表現されるようになる。その意識に連動しきれなかった時間帯を経て,「縦」を素早く奪いに行くフィードを繰り出していけるようになる。「勝ち点1」を確保できた背景にあったのは,「縦」への意識だったように感じます。


 11スペックなフットボール,その熟成過程を感じながら「勝ち点1」が,というのであれば,先につながる印象も残るのだけれど,基盤に関わる課題を強く感じさせながら,「チカラ」で「勝ち点1」をなんとか抑え込んだ,という印象の方がはるかに強い。12節をそのまま消化しているわけではないとしても,いささか今季のフットボール,その姿が曖昧なままだし,戦術的な基盤が現有戦力とフィットしているのか,という疑問も付きまとう。戦術的な浸透を徹底する,という部分と,現実的に修正すべき部分とをしっかりと見極め,整理する。それほど多くの時間が残されているわけではないと思いますし,リアルな対応を,と思います。