カズ、CBF理事へ(か)。

南米選手権では,ポリティクスの脆弱性が気になりましたが。


 脆弱性を感じるのは,政治感覚だけではない,というのも確かです。そんな状態が変わるきっかけに,というのは正式決定もしていないのに過剰な期待感を背負わせることになるかも,ですが,カズさんが構築していくだろう関係性は,いつか必ず武器になる,と思うのです。


 今回は,こちらのニュース記事をもとに,三浦知良選手がCBF理事に,という話を書いていこう,と思っています。


 ごく大ざっぱにこちらの記事をまとめれば,永住権を保持していて,さらにはブラジルとの関係も深い三浦知良選手に対して,ブラジルサッカー協会(CBF)が理事就任を打診した,というものであります。役職,と言いますか,担当は極東エリア,とのこと。


 現役のプロフェッショナル・フットボーラーが理事に就任するとなれば,かなり異例なことですし,永住権を取得しているとは言え,国籍面を考えても,やはり異例なことです。ただ,それだけカズさんとブラジルとの関係性が深い,と言うこともできますし,この話を動かしたCBF副会長としても,その関係性はCBFの世界戦略にとって意味を持った,ということでしょう。
 この記事でも触れられていますが,ブラジルは2014年のFIFAワールドカップをホストする立場です。さらには,オリンピックをホストする立場でもあります。であれば,まずはフットボールという競技をきっかけとして,ブラジルという存在を積極的にプロモートしていく役割をCBFは担おうとしているように受け取れます。
 ではありますが,もうひとつ現実的な“フットボール・ポリティクス”という側面でもCBFは世界戦略を意識しはじめた,ということではなかろうか,と見ています。たとえば,FIFAがアレンジしている,国際Aマッチデイにしても「欧州」という存在は相当に強いものがあります。端的に言ってしまえば,欧州のスケジュールを下敷きにして国際Aマッチデイがアレンジされている。それだけ,欧州の存在感も,そして現実的な発言力も大きくて,もう一方の雄であるべき南米の存在感がいささか薄い,ということは言えるかな,と思います。モータースポーツの世界でも,“サロン”などと形容される(当然,決してポジティブな意味を持った言葉ではありません。)要素が見え隠れしていますが,同じような要素がフットボールでも存在している,ということを示しているように思えるのです。そんな状態をCBFとしても,好ましくは思っていないはずです。であれば,ワールドカップに向けた準備期間である,この時期は「動く」にあたって最適な時期だったのではないか,と推理します。CBFもFIFAの方針には拘束されるわけだけれど,CBFが意図する方向性に対して,賛意を示すFAが世界に広がっていけば,FIFAの方針が最終的にCBFの意図する方向性に寄り添っていくことも,決してあり得ない話ではない。


 「ひと」のつながりを積極的に構築していこう,ということが,CBFの意図だとするならば,JFAもカズさんを通じて,この「ひと」のつながりを大事にしてほしい,と思います。
 ちょっとばかり話はズレますが。
 南米選手権のことで,個人的に感じたのは「ひと」のつながりがもうちょっと緊密だったら,という部分です。交渉の裏側,が意外にメディアを通じて出てきていた,というのは決して悪いことばかりではないけれど,それだけ「正式ルート」に近い部分しかない,とも言い換えられるように思うのです。どれほどのサポートを受けられるのか,そして実際にサポートできるとすればどこまでか,など,実務に関わる部分を,「ひと」の関係性で探り当てる,という過程があってもいい,と思いましたし,こういう部分で「水面下」が機能しきれなかったような印象を持つのです。


 いずれにしても。異例な話ではありましょうし,意外な話でもあるのですが,将来的な部分を思うと,決して悪い話ではない。この話,注目していきたいと思います。