SLK。

MX−5に影響を受けたモデル,という説明をされます。


 確かに,そういう側面は否定できないでしょう。それだけ,MX−5(ユーノス・ロードスター,であります。)が与えた衝撃,とりわけ欧州メーカに与えた衝撃は大きなものがあったようです。フィアットBMWに,そしてポルシェにメルセデス。MX−5の牙城を崩すべく投入されたな,と思えるモデルがある反面で,MX−5をヒントにもうちょっと高級な路線を狙おうとしたモデルもあった。どちらかと言えば,メルセデスはこの中間を狙ったのかな,と思います。


 今回はフットボールを離れまして,webCGさんのニュース記事をもとに,SLKの話を書いていこう,と思います。


 では,いつものようにデザインな話,と思ったのですが,この記事をまとめている沼田さんがかなりわかりやすい解説をされていますので,今回はちょっと視点を変えてみようと思います。



 MX−5フォロワーとして位置付けられるSLK。そのSLKを特徴付ける技術要素が“バリオルーフ”であり,この機構が今度は,日本メーカを含む各メーカに大きな衝撃を与えることになるのです。今回は,技術要素の側面からSLKを眺めてみようと思います。


 バリオルーフがなぜ,ほかのメーカにインパクトを与えたのか。


 その理由を推理してみると,「幌」のように収納可能なロジックを構築したことに行き着くのではないかな,と思うのです。メタルルーフを使ったオープン,という意味で言えば,CR−Xの後継機種である“デルソル”などがSLK以前には存在しています。ただ,このときの収納ロジックを思い出してみると,幌を収納するような動き方はしていません。しかも,メカニズムがかなり大がかりな印象を与えてしまってもいます。対してSLKは,幌をメタルルーフに置き換えたかのような収納を可能にして(ということは,オープン時のラゲッジ・スペースはほぼ使用不可能ですが),しかもクローズドのような快適性をものにした。これは相当な衝撃をもって受け入れられたようです。たとえば,BMWはZ3でシンプルな幌構造を採用しますが,モデルチェンジによって上級移行を果たすとメタルトップを採用してきますし,トヨタソアラ(その後,レクサス・ディビジョンに移籍すると“SC”とネーミングが変更されるのですが。)はそれまでのクーペ・ボディからメタル・ルーフを採用したオープンへと,ボディ・スタイルを大幅に変更してきます。


 では,個人的にこのメカニズムをどう見ていたか,と言えば。


 スポーツなモデルに採用しない限りは,悪くないかな,というものでした。クルマも運動体ですし,であるならば当然に物理法則に拘束されるわけです。重量が大きければ,その運動体にかかる慣性力も強くなる,と。つまり,運動特性面で重量が重いのは明確にハンディなのです。そして,このような機構はシンプルな幌よりも明らかに重い。そもそも剛性面で不利なオープンで追い込むような走りをすべきではないけれど,それでもスポーツを名乗るならば「軽さ」を追い求めるべきだ,と。そう見ていたわけです。


 ただ,GTなどであれば話は別で。


 「快適性」も確かに重要な要素です。加えて言えば,オープン・モデルであるとしても実際にルーフが畳まれた状態である時間は,決して長くない。であれば,耐候性や快適性の確保に難がある幌を積極的に採用する意味は薄いし,重量面のネガティブよりも耐候性,快適性を選択するだろう,と思うわけです。
 今回のSLKはグラストップの透過度を調整できる機能を落とし込んできます。つまり,オープン・モデルであってもオープンにされている時間がどれほどのものなのか,メルセデスという会社はよく理解しているわけです。幌の持っているメリットよりも,メタルトップによって得られるメリットを,メルセデスの顧客は選ぶと。個人的には,オープンでありながら,なぜに透過度を調整できるグラストップを採用しなければならないのか,などと疑問を感じてしまう(ちょっと寒ければ,ドカジャンのようなジャケットを着てでもオープン,というのがちょっといいと思っている)のですが,この疑問を裏返してみれば,このモデルを考えている顧客層はオープンとしてSLKを見ているのではなくて,オープン「にもなる」2シーターGTとして見ているのかも知れないな,と思ったりします。